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20128/3

8・3せんぱい日記【『うん。これは大政奉還するしかないんじゃないの(笑)』にビックリしたけど、笑ってしまった。この発想、凄いね。】前川英樹

 

7/16(月)
反原発デモ。17万人。
先日の官邸デモの時に、「警備の警察官のスピーカーを借りて、解散情報を伝えた」という話を聞いて、「それは問題だろう」と書いたのだが、でも”敵の武器を利用するのはゲリラの鉄則”と言ったのがチェ・ゲバラだったか毛沢東だったかは忘れだが、確かにそうだ。

7/17(火)
2年前に軽微な脳梗塞で12日間入院した。後遺症は、言語も身体にも他者からほとんど分からない。微妙なところに実はあるのだが、その程度だったのはまことに幸運だった。
で、この季節にMRIを撮ることにしていて、炎暑の中出かけてきた。

山田風太郎記念館から「記念館だより」が届いた。
なんとなく眺めていたら、=風太郎語録=という囲みに気がついた。こう書いてある。「ぼくはあと二、三年で死にますけどね、あなたたちが必ず遭う大変なことは大地震だな、それから・・・・・あ、そうだ、年金がなくなることだね(笑)。」と。これは、1997年1月のインタビューの発言で、「いまわの際に言うべき一大事はなし」(角川春樹事務所 1998)からの引用だ。
う~ん、流石山田風太郎。
風太郎さんは2001年に亡くなっている。79歳。発言から4年だ。
「いまわの際に言うべき一大事はなし」は、「人間臨終図鑑」(下)の近松門左衛門の言葉として紹介されている。「口にまかせ筆に走らせ一生を囀り散らし、いまわの際に言うべく思うべき真の一大事は一言半句もなき倒惑」というのだが、風太郎さんはこの言葉が、勝海舟の最後の一言「コレデオシマイ」とともに気に行っていたそうだ。
「人間臨終図鑑」(徳間書店 1987 上425P 下435P 定価各2400円)はまことに奇書というか、怪書というか、こんな本を作ってしまうということが呆れるほど凄い発想だ。労力にも感服する。全部で922人の「最後の一言」が集められている。
秋になったら風太郎記念館に行こう。

 7/18(水)
「どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?」(内田樹 高橋源一郎 ロッキング・オン)
<3.11>を戦後という物差しではなく、近代という目盛で考えることに全く同意。その上で、55年体制というOSが疲弊して機能不全だということも、そのとおり。
と思っていたら次の会話の一言に唸ってしまった。

内田: 今の日本で、国土の安全と国民の健康を最初に考えて、それだけを祈っている人、天皇家しかないもの。
高橋: そうだね。いちばんラディカルなリベラリストは天皇家だもん。
内田: 日本国憲法を遵守して、9条も大事にしているしさ。3.11からあと、天皇家の政治的プレゼンスって、上がったよね。
・・・(略)・・・
内田: 「震災が起きても、なんで掠奪がおきないのか」ってよく言われるけど、海外と日本でいちばん事情が違うのは天皇がいるってことなんだよね。
高橋: うん。これは大政奉還するしかないんじゃないの(笑)
内田: ・・・「革命」とか「大政奉還」とか。それくらい大きな枠組をとって考えないと、どこに向かうべきか、わからないよ。
高橋: もっともリアルな革命は、そっちだよね。
・・・(略)・・・
内田: 戦後66年経って、天皇制の政治的意味を、これまでの右左の因習的枠組みから離れて、自由な言葉遣いで考察するとしたら、今だよね。

「大政奉還」かぁ・・・!?!
対談というのは、話があちこち飛ぶというのが面白さの一つだし、ましてこの二人の知的会話は刺戟に満ちてどんどん読めたが、これにはビックリ。天皇制はほんとにまじめに考えるに値する、日本の根っこにあるテーマだと思うし、「天皇とアメリカ」(吉見俊哉/テッサ・モーリス・スズキ 集英社新書 2010)も面白く読んだけど、「大政奉還」ねぇ・・・これは凄いや。

7/19(木)
朝日新聞「オピニオン」欄、小熊英二のインタビュー&ルポ「金曜の夜、官邸前で」。
「(今は第三の戦後の時代で)、経済成長の時期に出来た仕組みから撤退できず、カネを配って無理やり維持してきた時代です。その限界線が来たということでしょう。」という時代の変化がデモにつながっているという。そして「政官財と大手マスコミ、つまり旧時代の上層部がいちばん変化がわかっていない」とも。

人間ドック検診(東京ミッドタウンクリニック)。

7/20(金)
気温上がらず、寒いくらいだ。
来シーズンのスキーの予約販売で神田へ。孫(小3女児)が成長したので板と靴を買い替え。母親(つまり、次女)が「私のは?」というので思わぬ散在。

7/21(土)
「放送人の会」幹事会。現在は任意団体だが、財務的な理由もあり一般社団法人化に向けて作業することを了承。定款策定の担当になってしまった。

7/22(日)
あやとりブログ【<つづく>を撮り損なってNGになったり・・・「テレビ小説」のこと。稲井クンポストで思い出だした往時茫々 閑話休題】 投稿。
SBC(信越放送)の知人が昨年退職。自由になったのでゴルフでも、ということで長野へ。

7/23(月)
長野カントリーでゴルフ。
スキーに比べればゴルフのレベルは大分下がるが、親しい人たちとのプレーは楽しい。長野カントリーは一番好きなゴルフ場だ。自然の条件がそのまま生かされていて、タフでグリーンも難しいが、面白い。夜、懇親。

7/24(火)
聖高原(篠ノ井線)に立ち寄る。
聖高原は30年以上前に、別荘地分譲を申し込んだら抽選で当たって購入。だが、その後別荘を建てる意欲もそれほど湧かず、生活スタイルもそれに相応しいものでもなく、放っておいた。わが家では、<別地>といっている。どうなっているか気になっていたので、この機会に視てくることにした。所在確認は出来たけど、手入れをしないままだったので、樹木が大きく育ってしまっていた。
さて、どうしたものか。妙な買い物をしたつけがきた。近所に数件の建物が見えるだけで、あの頃はバブル前だったが成長期には違いなかったので、やはり土地だけ手に入れた人たちが多いのだろう。松本経由で帰る。

7/25(水)
「北斎(カラー版)」(大久保純一 岩波新書)
やっぱり凄い絵師だ。

この本、本体価格1000円って、カラー版が豊富なのに安いと思う。
暑い。先週の低温が嘘みたいな暑さ。

7/26(木)
妻の実家がある焼津は養饅場が多い。親戚が鰻を送って来てくれた。鰻高騰の折、ありがたい。
丁度、次女も来ていたので近くに住む長女とそれぞれに分ける。
夜、「あやブロ暑気払い」。赤坂「うまや」。
14人参加、みんな個性的で遊び心もありよく話す。

7/27(金)
諸々の相談事で、TBS時代に縁のあった弁護士に会いに銀座へ。
銀座1丁目は、昭和通りを超えると下町の雰囲気が濃く、なかなか味わい深い。戦災を免れた地域で、関東大震災当時の建物もあるという。それにしても連日暑い!
夜、鰻。白焼きをわさび醤油で食べるのが好きだ。
焼津では蒲焼を江戸風に蒸してから焼かないので、好みが夫婦で違うという事情もある。

7/28(土)
昨日、一昨日と外出したし、夜はオリンピックのサッカー中継を観たり、その上寝苦しかったりで、寝不足だった。久しぶりに良く寝た。
草取りなど外回りのことをしようと思ったが、暑すぎる。
いつもは早めに床に着く妻が、なでしこのスエーデン戦を終わりまで観ていて引きわけに終わった途端、「なんだ」と憮然と呟いていた。

7/29(日)
気になっていた庭の雑草取り。
午前中は外の方が風通しよく、思ったよりしのぎやすかった。

「道草」(夏目漱石)。面白かった、非常に。
「然しいまの自分はどうして出来上がったのだろう」
「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起こった事はいつまでも続くのさ。ただ色々な形に代わるから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ」
なんで今頃「道草」かというと、辛亥革命と孫文のことを書いた「革命いまだ成らず」を読み終わったところで、たまたま「『草枕』の那美と辛亥革命」という本の書評に出っ食わしてなんとなく読んでみようと思ったのだが、そのためには「草枕」を読みなおそうと思い、読み始めたところで長野に出かけるのに持って出るのを忘れ、で、駅前の書店で何か適当なものをと物色していて同じ「漱石」の「道草」に手が出たというわけ。わが身の出自や幼少時の体験を思い起こさせるところが多々あって、作家ではないから作品として書くというものではないが、やはりなんかの記録を書いておこうかという気にさせられた。そういう思いは時々起こるのだが、さてホントにそんな気力が湧いてくるのだろうか、どうだろうか。

7/30(月)
丘陵地帯のわが家には法面下の道路沿いにも地所がある。夏は雑草が鬱陶しい。
意を決して2時間草取り。さっぱりした。
夜、TBSニュースバード「ニュースの視点・デモの力①音楽」。FBで金平君の予告で知った。
ジンタらムータの大熊さんという人を初めて知った。
今年の春、青山通りで原発反対デモに出遭ったとき、鼓のリズムで歩いているのが画一的で違和感があったが、大熊さんのジンタの感じは良いかもしれない。“ええじゃないか”にちょっと感心。ここから、オッペケペみたいな演歌のルーツにつながっていくのだろうか。司会の増田君という女性は面白い。臆さないところが良い。
反原発デモの状況を「脱政治化」という記事があるが、そうだろうか。組織・団体や55年型運動から“脱”していると思うけど、政治と無縁の意思表示ではない。デモの一つの大きなモメントは間接民主主義の限界批判だろうし、それはちゃんとした政治的行為だ。そして、これからもデモが続くとすれば、恐らく次の検挙者も出るだろう。非暴力的であることと政治的であることは相反しない。
あやとりブログ【「走馬灯株式会社」の時間】のあや取り原稿を書く。

7/31(火)
民放連研究所「客員教授研究会」。第2年度だが、前年と同様オブザーバーとして定例参加。
終わって午後1時半過ぎに紀尾井町から赤坂まで歩く。暑かった!

 

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964 年TBS入社 。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳の ある日突然メ ディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジとい うポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。誰もやってないことが色々出来て面白かった。その後、TBSメディア総研社長。2010 年6月”仕事”終了。でも、ソーシャル・ネットワーク時代のテレビ論への関心は持続している・・・つもり。で、「あやブロ」をとりあえずその<場>にして いる。
「あやブロ」での通称?は“せんぱい”。プロフィール写真は40歳頃(30年程前だ)、ドラマのロケ現場。一番の趣味はスキー。ホームゲレンデは戸隠。

 


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