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201111/15

[想像力を越えること -<3.11>の現地に行って来た-] 前川英樹

11/11(金)
今日から3日間、東日本大震災の被災地に行くことにした。
遅きに失したと思うけど、やっぱり足を運び、自分の目で見たいという思いは強かった。参加したのは、この<あやぶろ>のメンバーの志村さん、木原さん、管理人の氏家さんと「調査情報」の金子登起世サン、そして前川。
今日は、仙台に昼過ぎ着。
仙台空港、名取川河口付近の閖上(ユリアゲ)地区、仙台港を見る。
宮城県南部の海岸は、三陸のリアス式のように山が迫っている地域に海が深く切れ込んだ地形ではない。平坦な地面にそのまま海水が這い上がるようにして来たのだろう。空港や畑地をスルスルと浸していく不気味な映像を記憶しているが、海岸線から何キロも内陸まで傷跡が残っている。
氷雨のせいもあって、暗澹とした気分になる。

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夜、河尻さんが合流したが、都合であす早く東京に戻ることになってしまった。残念。
河尻さんが早くから被災地ボランティアの経験があったので、そのことが今回の企画の刺戟にもなった。河尻さんに感謝。

11/12(土)
晴。昼前に、気仙沼のJNN三陸支局着。
龍崎支局長にいろいろ話を聞く。三陸支局開設に共感していたので、訪問してよかった。三陸支局の存在は、放送メディアの在り方そのものに関わる意味がある。TBSの報道局長や支局長、あるいは各局から来ているスタッフたちが何を考え、どういう仕事をするかということだけでなく、そのような拠点を作ったこと、そしてそれを持続させることが大事なのだ。支局の状況を見て、改めてロジの重要性を感じた。
各局から交替も含め、25人ほどのスタッフが常駐。毎日の定時情報などの取材・編集・送出。コストも容易ではないだろう。ネットのニュースとの違いは何か、システムと同時に情報の形式と意味についても考えさせられた。

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気仙沼、陸前高田、大船渡、大槌、を見る。
各地とも瓦礫撤去、整地作業の段階だが、「復興の槌音高く」という感じはない。
気仙沼、大船渡は町の形は多少残っているが、廃墟という感じのままである。
陸前高田と大槌は町ごと消えてしまったということが良く分かった。何もなくなってしまったのだ。他にもそのような地区はあるのだろう。
3.11.から日をおかずに現地入りした記者たちが「無力を感じた」というが、ほんとにそうだったんだろう、今だってそうなのだから。自然の力の前に人間が無力だということと、それを伝えるためには映像も言語も無力だということと。

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陸に打ち上げられた他の船は海に戻されたが、この船を戻すのは無理だという。大震災記念公園に<記憶>として残すという計画があるが、「この船に家を潰された」という住民もいて、どうしたらいいか決まってないという。最後は、解体するしかないのだろうか。

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写真というものは、ある何かを切り取ることだと思っていたが、何もないということは切り取り様がないということだ。いわゆる「絵になる」という風景とは、全く違う空間がそこにある。青空が切ないことを表現できない。

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夕闇せまるなかで見た大槌町は、惨憺たる感じが今でも残っている。土曜日のせいか、復旧・復興の工事もあまり見られず、一面に荒涼とした光景が広がっていた。

11/13(日) うす曇り
田老町。今回の震災で最大の津波に襲われた地区。
ともかく、「すさまじい」としか言いようがない。圧倒的な力だ。
8ヶ月たった今でもそう思うのだから、あの日ここにいた人たちは、どれほどの思いで津波を見ていたのだろう。どんな音を聞いていたのだろう。たろう観光ホテルの5階の高さにまで残る被害を見て、その高さまで町全体が津波に覆われる情景は想像を超える。
暴力的破壊力。何が起こったのかを想像することを越えるほどの凄さ。

町役場の人だろうか、呆然としている我々に「お疲れ様です」と言ってすれ違って行った。
矛盾した言い方だが、「心が物理的に壊されてしまった」のではないかと思ったが、たとえそうであっても、少し日が経てば、日常の営みが始まっている。人はそのようにしか生きられない…らしい。そのことにまた、コトバを失う。

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今回は、とりあえず見てきたこと、感じたことのスケッチにとどめる。
衝撃的な3日間だった。

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 <アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは“蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいから NHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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