あやぶろ／ＯＬＤ

自業自得とはいえ、まさにひと月まえの２月11日、スキーで左足下腿部骨折。スキー場の麓にある諏訪中央病院に入院、手術を受けて東京に戻ってきたのが2月末のこと。松葉杖で業務に復帰中に起こったのが今回の大地震だった。

３月11日
赤坂６丁目のオフィス(５階建ての２階)でかなりの揺れを感じる。その長さから、これは
数日前から不安定だった三陸沖か、ひょっとしたら東南海か、と思いつつTVの速報画面では震度６や５強という数字が並ぶ。
まずはオフィスにいない従業員やスタッフの安否確認。携帯メールは何回かトライすると送れる。PCメールは問題なし。通話は固定も都内どうしは厳しいものの、私の郷里(山口)へは繋がる。
ＴＢＳ本社からの安否確認メールが何通か届き返信しようと思うが、i-modeサイトとなかなか繋がらず断念。PCサイトから返信することに。オフィスの実害は32インチ液晶TVの「足」の一部が揺れで折れたらしく緊急措置としてビニルテープを巻いて補強。

夕刻、PCサイトではフジテレビとＮＨＫがＵ-Streamとニコ生、TBSがU-Streamでサイマル配信を開始(TBSはCSニュースバードのサイマル)。ラジオのradikoはどうだろうかとサイトを立ち上げてみるがアクセス集中のためか繋がらない。(その後radikoは、エリア制限を解除、日本中どこからでも聴けるようにしたが、集中を避けるため、エリア内で地上波を聴ける方はなるべく地上波で聴いて欲しい旨アナウンスしていた)

さて、丸の内線が動くのを待って、赤坂見附駅から深夜自宅へ。車内は地下鉄が動くまで飲みながら待っていたと思しき乗客多数で終電並の喧噪。新高円寺の自宅はマンションの12階。当然エレベータは不通。松葉杖で休みながら12階へ昇る。
部屋に入ると、なかり揺れたらしく、グラス数個と酒１本、それに40インチTVの液晶画面が倒れたときにサイドテーブルの角に当たったとみられ全損の状態。後片付けは夜が明けてからと決めこみ、幸い寝室のサブテレビは生きていたのでつけっぱなしにして寝る。

３月12日
あさ6時頃目が覚める。TV各局の報道から津波の被害は甚大なものでることが判ってきた。しばらく通常の編成に戻れないなという予感もする。
起きて家人と片付けを始める。松葉杖の私はラジオを聴きながらもっぱら倒れた本の整理。
TBSラジオでは永六輔、久米宏とレギュラー陣が出ており、なぜかホッとさせられる。阪神・淡路大震災のとき「ラジオからいつもの声が出ているのを聴いて励まされた」という被災者の声が多数あったことを思い出す。
気仙沼でTBCの番組のロケ中に被災したというサンドウィッチマンが、ディレクターとともに久米宏の番組に電話出演。「間一髪だったこと」「被災地は想像を絶する状態である」ことが伝えられ、しばらく片付けの手が止まる。

片付け・掃除もおおかた終了した頃に福島第一原発で爆発事故の一報を知る。緊急事態宣言のなかでの事故。未曾有の危機という言葉がよぎるがこんな時こそメディアの役割と真価が問われるだろう。想像を絶する状態でどれだけ想像力を働かせることができるか、そなことを考えさせられた２日目だった。

木原毅（きはらたけし）プロフィール
1978年早稲田大学文学部卒業後ＴＢＳ入社。ふりだしはテレビ営業局ＣＭ部。その後約20年ラジオのさまざまな現場生活を経て、2000年頃からインターネット・モバイルの部局へ。07年よりＴＢＳディグネット代表取締役社長。