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20165/16

YouTube時代のスター「BABYMETAL現象」を読み解け! 〜2016年の「アーチスト体験」とは〜

大変遅ればせながら、BABYMETALにはまっている。今年4月1日に出されたセカンドアルバム「Metal Resistance」が、英国で日本人として最高の15位(富田勲の18位を、41年ぶりに抜く)。米国でも、坂本九以来53年ぶりにビルボード・トップ40入り(39位)というので、日本でも人気急上昇中の10代女子3人組である。

スクリーンショット 2016-05-16 16.07.47

* 左からYUIMETAL(16)、SU-METAL(18)、MOAMETAL(16)。
BABYMETAL は、彼女たちに狐が乗り移ってメタル演奏を行うという設定。
指の狐サインが、決めポーズ。腕の筋肉が、半端ない。

 

4月2日には、英国の「武道館」というべきウェンブリーアリーナ(1万2千人)で単独ライブも成功させ、欧州、北南米、東南アジアといわゆる欧米音楽圏に殴りこみをかけている状況だ。私の音楽嗜好がほぼ米国経由ということを考えれば、私がはまるのは「アイドル好きだから」ではないということはご理解頂けると思う(笑)。
音楽評論家の間でも、ミーハー神の湯川れい子が「お気に入り」と言ってみたり、ピーター・バラカンが「まがい物」と言ってみたりと、もはや無視できない存在になったといえるだろう。

これまでにも多くの日本人アーチストたちが、欧米進出を狙ってきた。私の記憶(趣味)でも、ピンクレディ、松田聖子、YMO、少年ナイフなどなど。最近ではYackのベーシストが日本人女子だったなあという感じ。
そんな中で、英米チャートの日本人記録を塗り替え、5月4日から米国で始まったワールドツアーでは、2000人クラスの箱がメインとはいえ、ソールドアウトを連発。チョッチョッチョッと想像を絶する成功ぶりといえよう。(「ポリスがブレイクする直前に、全米のライブハウスを回った。金髪野郎3人で、受けも悪くなかった」というスティング発言を思い出す・・・)

 

それにしても日本語で歌うBABYMETALが、なぜ“世界で”受けているのか?「アイドルとメタルの融合」とか、「激しいダンスが言語を超えた」とか、音楽的コンテンツ的分析はマーティ・フリードマンにお任せするとして(話し出すと、日が暮れちゃうし)、ここではYouTube時代のアーチスト像について考えてみたい。

 

序章 YouTube時代の成熟

YouTube初期のスターといえば、ジャスティン・ビーバーが有名だ。母親がアップし続けた彼の動画の人気が高まり、プロデューサーの目に留まったというサクセスストーリー。

しかし、YouTubeの本当のすごさを見せつけたのは、2012年にアップされ、世界中で大ヒットした韓国人ラッパーPsyの「江南スタイル」だろう。再生回数は今では25億回を超え、アジア音楽として世界最大のヒットとなった。
https://www.youtube.com/watch?v=9bZkp7q19f0

そもそも韓国外でのリリースを考えていなかったという「江南スタイル」だが、YouTubeに動画を載せたことで、海外で火がついて大ヒットにつながった。テレビとは異なり、世界中どこでも視聴できるYouTubeならでは。言葉が通じなくても、乗りのいい「音楽」と“乗馬ダンス”のようなインパクトのある「動画」があれば、世界的な大ヒットが生まれる可能性があることを実証したのである。
しかし、その後も東方神起、少女時代、KARAなど、韓国人アーチストが欧米マーケットに次々と攻勢をかける一方で、日本人アーチストは相変わらずの“ガラパゴス状態”が続いていた。そんな中で彗星の如く現れた、日本の希望の“芽”こそBABYMETALなのである。

 

第1章 YouTube「ギミチョコ!!」のヒット(国境を超えて)

そもそもBABYMETALの人気を決定づけたのは、2014年2月にYouTubeにアップされた「ギミチョコ!!」という曲である。

BABYMETAL「ギミチョコ!!」
https://www.youtube.com/watch?v=WIKqgE4BwAY

この動画の再生回数は、既に5000万回を超えた。特筆すべきは、外国語の書き込みの多さ。繰り返すが、テレビしか映像メディアがなかった頃なら、考えられなかったことである。
「ギミチョコ!!」を見ると、メタル風のキャッチィなメロディライン、人形のようにカワイイ女の子たち、赤黒のメタル風だがどこか和風のファッション、コミカルな掛け声、激しく細かくどこか人形っぽいダンスなど、日本語がわからなくても楽しめる様々な仕掛けがあることがおわかりになるだろう。
そして日本のファンの異様な盛り上がり。この動画を見れば「BABYMETALには、なにかがあるらしい」と思って頂けるのではないだろうか?

そういえば今年3月、大阪の小学校で「将来なりたい職業」の第3︎位にYouTuber(ユーチューバー)が選ばれ話題になった。YouTubeに動画を投稿し、広告収入を得るという職業である。海外では、億を稼ぐYouTuberもいると聞くが、その中にセルフィーならぬセルフ・リアクション動画というジャンルが出てきた。

簡単にいえば、人気のある音楽や動画を「自分が見て、リアクションする様子を撮る」動画である。YouTuber予備軍である彼らは、自分のリアクション動画でページビューを稼ぎたい。そのためには、話題性のある“リアクションしやすい動画”が必要となる。
ということで、選ばれるのがBABYMETAL動画ということになる。では、そのリアクション動画を見てみよう。

YouTuberのBABYMETALリアクション動画
https://www.youtube.com/watch?v=PeARpcDimx4

「KARATE」インドネシア少女のリアクション動画
https://www.youtube.com/watch?v=xy7m_aaniYQ

(参考)BABYMETAL 最新シングル「KARATE」
https://www.youtube.com/watch?v=GvD3CHA48pA

2つ目のインドネシアの少女たちのリアクションのなんとキュートなこと!言葉なんかわからなくても、カッコイイと感じている彼女たちのリアクションこそ、BABYMETALが海外で受ける魅力を雄弁に語っているといえないだろうか。

 

第2章 豊富なアーカイブ映像(時を超えて)

しかし個人的には、BABYMETALの一番の破壊力は、過去のアーカイブ動画の多さではないかと思っている。
そもそも、彼女たちは「さくら学院」というアイドルユニットの出身。BABYMETALとは、2010年に結成されたさくら学院の「重音部」という“部活”から発展したチームなのだ。つまり、3人とも小学生(もっと小さい?)の時から歌やダンスのレッスンを受けてきたアイドル界のプロなのである。インターネット番組や、テレビ出演も少なくない。

とはいえ、競争の激しい日本のアイドル業界において彼女たちが注目されていたかというと、必ずしもそうではない。
ただ、ひとたびBABYMETALとして注目を浴びた今、過去の幼い彼女たちの豊富なアーカイブ動画は「シンデレラ・ストーリー」の前段階として大きくフィーチャーされることになる。

BABYMETAL初期、重音部の始まり
https://www.youtube.com/watch?v=yYLVIeuJKGU

かつて、あるアーチストを好きになると、ファンになったタイミングが重要とされた。ファンになる以前の“アーチスト情報”を得ることが難しかったからだ。しかしBABYMETALの場合、その始まりである「さくら学院・重音部」時代からの動画がYouTube上にふんだんにある。いつファンになっても、彼女たちの成長の過程を、誰でも“目撃”し“共有”することができるのだ。

 

第3章 リアルタイムで見る(共に生きてる!)

5月4日にNYで始まったワールドツアー。GWということもあり、熱心な日本人と現地メイト(BABYMETALファンのことを、メイトと呼ぶ)が争うように、ライブの模様をスマホでアップしている。まさにUGC(User Generated Content)そのものである。
その情報や動画が、ほぼリアルタイムで入ってくるとは、なんという時代だろう(中には、スマホ中継を仕掛けた猛者もいたが、さすがに削除されていた)。私たちは東京にいながらにして、彼女たちの海外での活躍を“目撃”することができるのだ。

NY公演で「きょうのお客さんわかんない」という声がもれたとか、ボストンでは最前列にいたちびっこメタルに手を振ったとか、フィラデルフィアでは「KARATE」の間奏で「Everybody Jump!」と叫んだとか、シカゴではメンバーに疲労の色が見えるとか、メイトたちはリアルタイムで彼女たちの一挙手一投足に一喜一憂することになる。

なかには、メイトたちがインターネット上に載せた複数の動画を編集し、テレビ中継の様に「カメラを割る」猛者もいる。ざっと見ただけでも、5台以上のカメラ映像が使われている。

2016年5月4日NY公演「KARATE」
https://www.youtube.com/watch?v=8biBddAoFro

つまりBABYMETALはその会場だけでなく、世界中のメイトに向けて、ライブ公演を行っていると言っても過言ではないのだ。

こうして、2016年の私たちは“時間”と“空間”と“言語”を超えて、アーチストのライブや成長を“目撃”かつ“共有”することが可能になった。

30年前に、アイドル追っかけをしていた頃と比べると、2次元だったものが3次元に。さらに、4次元5次元、期待!期待!というまったく別次元の“体験”に昇華されているのだ。

近い将来、映像がもっと鮮明になり、中継がもっと簡単になったら、どんな「アーチストとの体験」が生まれて来るのだろう?今から、ド・キ・ド・キ☆モーニングなのである(笑)。

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  • 山脇伸介
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