あやぶろ

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201312/24

「キャンディクラッシュ」に、はまっています!

もし、あなたの友人が「ちょいと!スマホの時間設定を変えたいんだけど?」と聞いてきたら、その人は「キャンディクラッシュ」依存症の疑いがある。

さらに、その友人のまぶたが腫れ、目が血走っていたら、かなりの重傷とみていい。まさに今、私がその状態だ。

キャンディクラッシュ」。スマホ用のアプリゲームである。最近、日本語版もリリースされ、テレビCMをはじめ、インターネットでもやたら広告が目につく。TIME誌によれば、2年前にイギリスで誕生したこのゲーム。最初はさほど注目を集めなかったというが、フェイスブック連携をきっかけに、あれよあれよという間に急成長。今では世界で5億人が1500億回以上(!)遊んでいるという爆発的メガヒットとなった。

このゲーム、ルールは至ってカンタンだ。パズドラなどのアプリゲームと一緒で、たてよこに同じキャンディが3つそろったら、消滅する。そうしてノルマのシールを消したり、テトリスのように果物を下に落としたりするのだが、あきれる(感心する)のはそのたくましい課金根性である。

まず、そのステージを突破するにはこんな武器(アイテム)はいかが?と言ってくる。料金は1個100円(英米では99セント)だ。「人生ゲーム」よろしく、それぞれのステージを突破すると物語が展開するようになっている。たとえば、つぶれていたキャンディ工場が復活したり、干上がっていたドラゴンの住む湖にレモネード水が戻ってきたり、眠っていた怪人が目覚めたり。「オズの魔法使い」や、「桃太郎」にも似ている。

スクリーンショット 2014-07-07 15.00.03

それにしても、よく考えられてるなあと思うのは「ライフ(=命)」である。そもそも5個のライフが与えられているので、そのステージがクリアできなくても5回までは遊ぶことができる。ところが、5回失敗するとライフは尽きてしまい、ゲームを続けることができなくなるのだ。
無料でゲームを続けるためには、約30分の充電タイムを待たなければならない(時には、24時間待つことも!)。
この「待ち」が、カギなのだ。以前、犬に「待て」を仕込むのが一番大変だとか、前頭葉が発達しないと「待て」ないので、子供と老人は待つのが苦手なのだとか、どこかで読んだことがある気がするが、とにかく「待つ」のはつらい。
今すぐゲームを続けたい諸兄には、「ありますよ~。ライフ1個100円で発売中!」。
そして、どうしてもお金を払いたくない人は「待つ」しかないのだが、「それならスマホの時間設定を進めてしまおう」と悪知恵を働かせることになる。こうして、世界中の「キャンディクラッシュ」依存症患者が、薬中のような顔をして(?)スマホの時間設定をいじくり始めているという訳だ。

それにしても、なぜ人は「キャンディクラッシュ」に、はまってしまうのか?キャンディや登場するキャラクターのデザインがカラフルでカワイイとか、それぞれのステージをクリアするときの達成感だとか、色々なことがいわれている。

スクリーンショット 2014-07-07 15.01.28
現在、「キャンディクラッシュ」依存症のど真ん中にいる私としては、「次になにが起こるかわからないワクワク感」(=ドラクエと同じですね)と、通勤時間の電車内で「片手間に遊べる気軽さ」がキモと思う。実際「キャンディクラッシュ」の販売元であるキング社は、片手での操作性に人一倍気を使ったという。

TIME誌は、「キャンディクラッシュ」が大ヒットした理由として、複数のプラットフォームにまたがって遊ぶことができる要素が大きいと分析している。
たとえば、スマホで「ライフ」1個100円を買ったとする。すると、あなたはパソコン上のフェイスブックでもゲームをすることができるし、インターネット接続のないオフライン状態でも遊ぶことができる。
つまり「キャンディクラッシュ」はデバイスやインターネット環境にとらわれず、いつでもどこでも楽しむことができるということらしい。

ちなみにこのキング社を作ったトミー・パームCEOは39歳のスウェーデン人。自らモバイルゲーム会社を立ち上げたのが2009年。3年後、キング社を設立しリリースしたのが「キャンディクラッシュ」だったという。

こうして今、世界で5億人以上のプレーヤーが、キング社に落とす金額が1日90万ドル。1億円近い金額だ。これは、かつてフェイスブックゲームで栄華を誇った「ファームビル(ジンガ社)」や、「アングリーバード(ロビオ社)」の売り上げをはるかに上回る規模だという。

今年1月にデザイン変更して以来、1か月に約7000万人のペースで「依存症」患者を増やしてきた「キャンディクラッシュ」。その患者のほとんどが、毎日はまっているという。そしてキング社は、2週間ごとに「新しいステージ」をつけ加えていくというのだから。正に「ネバーエンディングストーリー」だ。

おっと、そろそろライフが充電された頃だ。それでは失礼して戻りますかな?「キャンディクラッシュ」の世界へ・・・。

 

山脇伸介(やまわきしんすけ)プロフィール
1991年テレビ局入社。
朝昼の生情報番組やニュース番組のプロデューサーを経て、
2007年8月から1年間、ニューヨーク大学院(NYU)で「テレビとインターネットのこれから」について学ぶ。
帰国後、他局に先駆けてTwitterやFacebookの導入に尽力。
著書「Facebook世界を征するソーシャルプラットフォーム」(ソフトバンク新書)
世界を征するソーシャルプラットフォーム (ソフトバンク新書)

 

 

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