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20142/10

【せんぱい日記】映画“ハンナ・アーレント”のこと、など

1/28(火)
同期の太田君の勧めもあり、PCは東芝のREGZA D814にした。新宿ヨドバシカメラで購入。
MAC推奨者も大勢いたが、WINDOWSに慣れてしまったし、それでなくても機種変更は疲れることが多いのでMACは諦めた。
今まで量販店で買い物をしたことがあまりないのだが、若いスタッフがなかなか気持ちの良い応対で「ウン、なるほどね」という感じだった。

 

その後、渋谷に出て映画「ハンナ・アーレント」を観る。
監督マルガレーテ・フォン・トロッタの前作「ローザ・ルクセンブルグ」は見逃したままだ。どこかでやってないだろうか、それともDVDでもないかなぁ・・・。書架の裏のほうに「ローザ・ルクセンブルク選集」4巻が眠っている。
それにしても、哲学者や思想家というより、哲学・思想そのものを映画にするというのはやはり凄い。それを演ずる俳優もすごい。西欧思想のしたたかさがそこにある。
例えば、アジアの発想には「人間存在」という抽象化、論理化はどこにあるのだろうか。むしろ、情緒と実理が発想の根底にあるのではないか、特に日本の場合。日本の近代化において西洋思想は実学として意味を持った。東洋の精神は抽象ではなく心のありようだったように思われる。その意味で「原点は存在しない」のだ。
アーレントのいう「思考する存在としての人間」とは、神と向き合うことで人間存在が成立するという一神教の中から生まれたのであろう、特に「神は死んだ」のニーチェ以後。
そして、近代とは非西欧社会の西欧化だとすれば、それぞれの社会で「思考する存在としての人間」をそのままモデルとして受け入れるのか、それともそれを一つの原点としつつそれと対立する形でもう一つの”原点”(日本的、中国的・・・的)を創出するかという問題だと思えるのである。アジアにおける長円の描き方、その難問からいまだに私たちは脱出できないのである。竹内好が残していった問題はそういうことなのだ。
ちょっと飛躍してみれば、「座談会『近代の超克』の映画化は可能か」という仮説を検討してみてはどうだろう。「近代の超克」は、ともあれ日本の近代がとりあえず行き着いた一つのステージだったのだ。それを素材として<今>何を私たちが語れるのかはそれほど悪くない発想ではなかろうか。1930年代の蘇りという思わぬ悪夢から覚めるには、その位の踏み込みがあってもよい。そんな悠長な場合ではないということも承知しつつ、ことはそれほど容易ではないのである。体の深いところで病んでいた病が表に出てきたのだ。

 

前川4

 

というようなことを思いつつ「ハンナ・アーレント」を観てもう一つ思ったのは、「<今>政治に希望はない。希望があるとすれば反政治だ」「映画には希望があるが、テレビにはほんの少しだけしか希望がない」ということだった。
テレビは<硬派>たりうるか?硬派の時代が来る、と書いたのはつい数年前のことだった。硬派とは右翼でも武闘派でもなく、真っ直ぐに時代と向き合うこと、時代に肩を直角に当てて、背筋を伸ばして状況を凝視する(ミツメル)こと、そういう態度を言う。政治を超える表現を成立させることも硬派の生き方なのである。

 

帰ってネットを開けば「明日ママがいない」が話題になっている。観ていないので具体的なことは言えないが、制作者としてあるいは局そのものとして、「何が問題」で「何が原則なのか」、「表現とは何か」、そういうことを考えることが試されていると直感した。安易な答えは出すな。それを考え抜くべきだ。そこから制作者の論理、局の態度が生まれる。テレビにとって、今そういうことが必要なのだ。「時代を最低の鞍部で越えるな」といったのは吉本隆明だった。
そして、「テレビとは何か」ということなのだ、やっぱりこの問題も。

 

1/29(水)
世話になっているマッサージさんが独立するのでカード、チラシ類を制作したいという。その相談も兼ねて赤坂ランチ。
「日韓中」企画書、印刷上がり。

 

1/30(木)
駐車場塗装作業、土曜まで。
午後、KDDIに「日韓中」についての支援依頼。KDDI総研から協力を頂けるとのこと。
良かった、有難い。ほっとする。
夕方、元札幌テレビの林氏がアジア向け番組提供について相談。TBSメディア総研氏家君に話を聞いてもらう。
夜、ユニオン重延君と一献。下北沢。

 

1/31(金)
ヨドバシカメラからPC届く。
梱包を開けると収拾つかくなりそう。やるべき雑事優先にする。
気温高め、暖かい。
明後日から戸隠。ゲレンデコンディションンが不安だ。

 

 

 

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポスト アナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。誰もやってないことが色々出来て面白かった。その後、TBSメディア総研社長。2010年6月” 仕事”終了。でも、ソーシャル・ネットワーク時代のテレビ論への関心は持続している・・・つもり。で、「あやブロ」をとりあえずその<場>にしている。 「あやブロ」での通称?は“せんぱい”。プロフィール写真は40歳頃(30年程前だ)、ドラマのロケ現場。一番の趣味はスキー。ホームゲレンデは戸隠。

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