ガラポンTVの保田さんが書いた本にグッときた
そして保田さんが書いてくれたのが「すべてはテレビ番組をもっともっと視てほしいから。ガラポンがやってること」というポストです。
保田さんとはその後もいろいろお話をさせていただき、ガラポンTVこそ不便で時代遅れとなってしまったテレビというサービスを、一気に生まれ変わらせるカギになると考えるようになりました。
そして、ガラポンTVの技術を活用した全局全番組の見逃し視聴サービスをテレビ局主導で行う構想を、何度かあやぶろのポストとして書いてきました。
「テレビの未来④:[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の衝撃・後編」
保田さんの本でもこれに関することが書かれています。
『将来像を語り合おう』という章です。
仲間との議論の中から出てきたアイデアとして・・・
『テレビ局全局と広告代理店とガラポン社で出資する新会社を立ち上げる。その新会社に対してテレビ局からクラウドレコーダー事業を委託してもらう。ユーザーが指摘に番組を録画するための録画機=ガラポンTVをインターネット上=クラウド上に置く。ユーザーは自宅に録画機を置くことなく、高額な録画機を購入することなく、月額数百円程度で、いつでもどこでもスマホやタブレットPCで過去二週間分のすべてのテレビ番組が視聴できる。視聴の際には、通常のテレビCMでなく、ユーザーの属性や嗜好に合うようなCMを流す』というものです。
このアイデアの優れているところは、どのような人が、どんな番組を、どのように見たのか、一つの番組のどこを繰り返して見たのか、どこで見るのを止めたのかなどの膨大なログデータを利用できることです。関東でいえば600世帯の何%の人が番組を見たのかという視聴率より、はるかに詳細なデータです。
このあたりについては、先の私のポストに詳しく書いてあります。
そしてこの本の後半部分には、テレビ局のような既存メディアにとっても参考になることがいろいろ書かれています。
例えば、『不完全でも発売することを優先』し、ソフトウェアのバージョンアップという『小さな波を何度も繰り返すことで、大きなインパクトをもたらそうと考えた』と書かれています。
テレビ放送では、トラブルやミスは禁物、常に完璧を求められています。しかしインターネットでは、β版という不完全な状態でサービスをスタートさせ、ユーザーの声を反映させバージョンアップを繰り返すことで、よりよい形のサービスに進化させていきます。それによって単なるユーザーをファンに育てるのです。
私は8ヶ月ばかりガラポンTVを使っていますが、確かにその間に操作性はどんどん向上しています。「ここは使いにくいなぁ」と思っていたところが、改善されていくのです。そうするとユーザーとしてうれしくなるし、ガラポンTVというサービスに愛着が湧いてきます。
また『僕らは製造業というよりサービス業をイメージしています』と保田さんは書いています。
大手家電メーカーでは『老若男女すべてのユーザーを網羅できるサポート体制をとることになる』ために『手続きは煩雑だし、時間もコストも』かかってしまいます。
『一方、僕たちはターゲットを絞って、ひたすらエッジをきかせ、とんがった商品で勝負できる』、『それについてきてくれて、応援してくれるユーザーのニーズに応えていく』、『そういう意味では、僕らの立場は、製造業というよりむしろ、サービス業に近いイメージかもしれません』、『まさに日々、ユーザーと向き合い、ユーザーと一緒に試行錯誤しながら進化してきているのです』。
このサービス業というイメージも、私がテレビ局にとって必要だと感じているのと同じです。
先に述べたポスト「テレビ局がまとまれば、広告費+販促費を狙える!?」の後半、「テレビ局の進化の方向は、メディア・サービス企業だ」という項目で、テレビ局は、地上波テレビをハブにして様々なサービスを構築し、それらをインターネットで精緻に結合させていかなければならないと書きました。
保田さんのこの本には、共感する部分が多々あります。
保田さんは、この本の冒頭であれだけネガティブなことを書いておきながら、最後の方では、自信を持ってこう言い切っています。
『ガラポンTV初号機から二年以上にわたって積み上げてきた経験とノウハウがあるから、今後どんな大手企業が参入してこようと、絶対負けない自信があります。進化するためのバージョンアップのネタは、まだまだありますから』
ガラポンTVには、地上波テレビのビジネスモデルとの相性の良さという、他の録画機にはない魅力があります。テレビ局がそこに気付いて、全局全番組の見逃し視聴サービスに今、乗り出せば、テレビの可能性は大きく広がるのですが。
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氏家夏彦プロフィール
株式会社TBSメディア総合研究所代表であやとりブログの編集長
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしている中、その未来をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っている。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
コメント
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リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…
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