「半沢直樹」を見終わって思うこと
現実は無視できないリスクの多さ
不正の隠ぺい行為が世間に発覚した暁には、かなりの確率で株主代表訴訟にも見舞われるだろう。金融庁からの業務改善命令もおそらく出される。業務停止や上場廃止もありえる。特に、訴訟を起こされた際の敗訴は個々の取締役にとって重大な意味をもつ。
メガバンクの上場株式ともなれば、取締役が犯した悪質な不正を隠蔽することは、その銀行のガバナンスとコンプライアンスの不在を裏付け、株価が急落するなどのネガティブな影響が生じる。
株主に不要な損害を与えたことで、取締役には少なからぬ賠償金を支払う義務が背負わされるかもしれない。事実関係を知った上で隠蔽を容認した役員にも、善管注意義務違反等の嫌疑がかけられ、一生が破滅しかねない賠償リスクにさらされる恐れがある。 したがって頭取に異議を唱える役員も必ず出てくるはずだ。
企業トップが積極的に公表したくない場合は、本人の自発的辞任という形で早期に取締役から退かせ、実質横領したカネの弁済をただちにさせて銀行外への転籍措置を秘かに進める誘惑にかられるかもしれない。
ただし、その場合も内密に不祥事を処理したことで発覚後のダメージはやはり小さくない。
企業にとって一番望ましいのは大和田常務の取締役降格ではなく、取締役を解任するか(株主総会議決による)、もしくは辞任をさせたうえで刑事告訴を行い、不祥事を積極的に公表して膿を出し切るやり方だ。
そのほうが企業体へのダメージが結局少ないということは、米国のエンロン事件(2001年)や日本のオリンパス事件(2011年)など、近年の企業スキャンダルの実例をひも解いても明らかだ。
ちなみにドラマで「懲戒解雇に相当」というセリフもあったように思うが、取締役は従業員(使用人)ではないから、それはできないだろう。
そもそも、明白な証拠が揃っていない段階で、経営幹部の不正疑惑を正式な議題として取締役会でとりあげることは、通常ありえない。
逆にいえば、議題にとりあげたからには、取締役会議長である頭取は、公表することを前提に証拠をそろえて必ず処分する決意をしているはずである。なぜなら、社外取締役や社外監査役のほか、外部の監査法人や監督官庁も取締役会での議事録の内容を知る立場にあるからであり、隠ぺいは事実上不可能だ。
しかしドラマ「半沢直樹」は、以前に書いたように、現実にはありえないような悪玉の跋扈と善玉の反逆という筋書きが、魅力の源泉だ。
あまりに荒唐無稽なプロットであれば問題だが、フィクションはフィクションの世界と割り切って楽しむのが一番いい。
頭取のあの判断は妥当だ、などと生半可な知識で講釈されても、そもそもそういう判断は今の時代にはありえないのであり、現実論を突き詰めていくと、「半沢直樹」という「圧倒的な熱量を放つ」(池井戸氏のコメント)ドラマそのものが成立しなくなってくる。
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