テレビCM復権のカギ、広告と販促の関係を理解する
メディアのデジタル化によって、ブランディングのための広告と、店頭(直販サイトを含む)へ導くための販促広告が、見た目で区別が付きにくくなっています。
ネット広告はそもそも広告なのでしょうか。テレビはスイッチを入れておくだけで次々と番組とCMが流れてきます。典型的なプッシュ型メディアです。視聴態度も完全に受身です。さしたる目的が無くても時計代わりにスイッチを入れっぱなしにする習慣性のメディアなのです。
それに対してネットは完全に能動的な態度で接触します。いくら動画コンテンツを見るといっても、検索して見つかったものをクリックしないと何も始まりません。バナー広告もあたかも偶然出会う広告に見えますが、そもそもそのページには自分の意思が働かない限り到達できません。ましてや、最近ではターゲティング技術の進化によって、偶然ではなくて必然的にそのバナーを見せられていることがほとんどです。SEM(検索連動型広告)にいたっては、興味を持った商品に関することを検索した結果画面に関連する広告を表示するわけですから、広告じゃなくて販促そのものと言っても過言ではありません。しかも検索をする時点で顕在顧客ですから分母は小さいのですよ。購買に至る「率」だけは高いかもしれませんが。
つまりテレビCMとネット広告などの販促メディアは「対」で考えるべきなのです。当然といえば当然の結論です。
テレビCMを販促的に使うという方法もあるでしょう。周到に設計された店頭プロモーションの効果を最大化するためにテレビをその入り口として捉えるのは考え方としては有効です。しかし、これはかなりテレビの限定的な使い方に過ぎません。
テレビCMはそれ以外にもこういう使い方があります。例えば、ニーズが顕在化しない段階での消費者にニーズを掘り起こす効果としてのテレビCM。気付いていないものを欲しいと思わせるところから始める訳ですね。あるいは比較検討中にも背中を押す効果としてのブランディングCM。購入後も自分の選択は正しかったと満足させる商品CM・・・などなど。残念ながら能動的メディアであるインターネット広告だけではこれらの効果を代用することはできないのです。
いずれにせよ、広告・マーケティングに成功の法則はありません。商品、ターゲット、時期によってもプランニングは変わるし、クライアントの求める成果によっても当然変わります。
テレビCMを効果的に使うためにも広告と販促の関係について今一度考えてみる必要があると思います。広告から販促へスムーズに引き継いでいく事が重要ですね。
テレビメディア側としてそれに応えるためには視聴率に加えて多様な切り口のデータを取りそろえていくことが大切です。それを解決するためのソリューションとして私はセカンドスクリーンに注目しているわけです。
今谷秀和 プロフィール
建築士、インテリアデザイナーとして活躍した後、1990年電通入社。
プロモーション、イベント、空間開発の後、デジタルビジネス系で13年間。
現在電通関西支社 テレビ局 局次長
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