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20135/1

日本のテレビ・フォーマットが世界を熱くする! カンヌ官民連携イベント大成功!

引き続き行われた“Treasure Box Japan”主催のランチでは、軽食やドリンクに加えて寿司なども振舞われ、座る場所がないほどの大盛況。プレゼンテーションを見た人からの引き合いが各局には立て続けにあり、商談も活発に行われた。

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 軽食ランチも満員御礼!

 

【重視したパブリシティ戦略】
今回のプレゼンは、ALL JAPAN体制で日本のプレゼンスをカンヌに集う関係者に示すだけでなく、日本のフォーマットの素晴らしさを世界にアピールすることを目的としていた。このため、カンヌに集えない世界各国の関係者が実数としては遥かに多いことも踏まえ、世界に向けた情報発信にも比重を置いた。これまで、日本が手掛けた「国際」イベントは、世界に拡散効果を持つ主要英語媒体で報じられる機会が少なく、海外関係者の間での知名度もいまひとつ伸び悩んでいる。存在を広く世界に効果的にアピールするには、英語媒体での情報打電が必要不可欠であることを踏まえ、今回のイベントは、自社ネット媒体を併せ持ち世界的に大きな影響力を持つ英語業界誌4誌(Hollywood Reporter誌、Television Business International誌、Television Asia誌、C21誌)に加えて、MIPTV開催期間中連日発行される日刊誌にも積極的に情報を提供した。これにより、日本のフォーマットに関する特集記事を複数誌で組んでもらえた。また“Treasure Box Japan”の広告を全誌に出稿したこともあって「日本のフォーマットここにあり!」を世界中の関係者に印象付けることができた。

 

 

【中韓の動き】
“Treasure Box Japan”は、元々、国策推進でカンヌでも急激にプレゼンスを増している中韓に刺激されて提唱された側面もある。MIPFormatsでも、中韓両国はプレゼンを行っていた。中国は、フォーマット輸出の視点からではなく、近年如何にフォーマット輸入大国になっているかという逆の視点からのプレゼンで、それなりに興味深かった。売れるフォーマットが無いから、と諦めてしまうのではなく、それを逆手に取るあたり、やはり「したたか」である。欧米のセラーにとっては、今や、なかなかフォーマットを購入しない日本よりも、中国の方が輸出先としては魅力が増しているとも言える。一方の韓国は、KOCCA(韓国コンテンツ振興院)の先導の下、大手各局が自社フォーマットをプレゼンしていた。やや驚いたのは、冒頭でKOCCAの関係者が、韓国は今まで日本のフォーマットをパクっていた、とあっさりと長年の侵害行為を認めた点。今は違うという点を強調したかったのだろうが、独創性は感じられず、日本の番組フォーマットの影響を依然受けている感は否めなかった。両国とも、プレゼン用のVTRを英語化さえしておらず、プレゼンターの解説も稚拙で、誰がみても日本の方が現時点ではまだ圧倒しており、正直、恐れるに足らずとの印象である。ただ、彼らの改善や実行のスピードは、日本を上回っていると認めざるを得ない。今回も、日本のプレゼンを終始録画していた中韓関係者もおり、次回は日本の良い点を踏襲して修正してくるのは間違いないと思われる。日本は、今回も優位性を証明できたが、安心してのんびりと構えているわけにはいかないだろう。

 

 

【欧米フォーマット】
一方の欧米であるが、いずれも番組フォーマット花盛りである。大手から中小まで、さまざまなフォーマットを販売しており、大型契約の締結も多数発表されていた。当社からも編成と制作から各1名が出張参加し、日本でも通用する斬新な番組フォーマットを精力的に探した。彼らの受けた印象を聞くと、日本で通用しそうなフォーマットは最後まで見つけられず、フォーマットの質からいうとむしろ期待外れで、日本のニーズと世界のニーズのギャップを逆に認識させられたとのこと。言われてみれば、今各国で大ヒットしているフォーマットの多くは、日本人からすれば、既に何十年も前からあるオーディション番組だったり、タレント発掘番組だったり、懸賞クイズ番組だったり、何ら目新しいことはない。また、欧米系のフォーマットのほとんどが、1人の勝者を生むために、その他全員を排除する「勝利至上主義」で、加えて「拝金主義」なまでの多額の賞金も伴う。悪く言うと、日本人には馴染み辛いワンパターンである。その意味では、日本の市場ニーズは、番組フォーマットに多様性を持たせ、ガラパゴス的に独自の進化をさせているのかもしれない。クリエイティブ面においても日本は世界に遅れを取っているわけではないし、むしろ独自に進化したフォーマットは世界を先取りしているとも言え、今後、世界に更に売れるポテンシャルは高いと多いに自信を持つべきだ。日本文化や日本的価値観の輸出にも繋がり、クールジャパン戦略の一翼を担えるだけの実績もポテンシャルも持ち合わせていると思う。
一方で、最近は欧米だけでなく、アジアの新興各国も情報発信を含むマーケティング(含:パブリシティ戦略とプロモーション)に非常に長けている点は否めない。広告や宣伝も洗練されている印象を受ける。前述したが、これらの点で日本は明らかに後塵を拝している。日本が持つ魅力を、さまざまな方面で伝えきれていないと、頻繁に感じさせられる。どんなに素晴らしいモノ(我々の場合は作品やフォーマット)を持っていても、それらの魅力を上手く伝え、市場ニーズも踏まえマーケティングできなければ、世界市場においては、それらは存在しないのとさして変わらない、と言っても過言ではない。これらを改善するだけでも、日本のフォーマットは必ず、今まで以上に世界に認知され、より一層流通すると感じている。

 

(次のページへ続く)

 

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