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201112/9

11月は忙しかった―東北、43,000字の作文、アルバム二つ ― 前川英樹

「あやブロ」は久しぶりだ。
11月は忙しかった。
東北被災地の今を見てきた。そのことは、ここでも短くレポートした。それと並行して民放連研究所から依頼された原稿書きに追われた。これは、「ネット・モバイル時代の放送」というテーマで、2010年3月に報告書をまとめた「放送の将来像と法制度研究会」のメンバー(大学や研究機関の専門家たち)が、それぞれの立場からこのテーマについて知見を述べるという企画だ。ぼくはその研究会の委員長だったので総論を書くことになっていた。11月末が原稿締め切りだった。およそ3万字が割り当てられた量的目途だが、先生たちのような論文書きの専門家やプロのライターではないので、ちょっとたじろぎというか躊躇いというか、そういう状態で手を束ね(ツカネ)たまま日が過ぎていたのだ。
ここで余談だが、Windoes7のWord機能には致命的な欠陥がある。まさか、ぼくのパソコンだけではないだろう。束ねるはそのままでは出てこない。「束ねる」(タバネル)という文字を引き出した後で、やっと読みに対応する。氷雨(ヒサメ)は氷と雨と別に打たないとダメ。こういうことはしばしばある・・・という話はここまで。
いま、放送メディアについて書くならば[3.11]は外せまい、とは思っていた。そのことと、「あやブロ」であや取りをしてきたいくつかの論点を組み合わせようとも思っていた。そんなときに、横浜の放送番組センターで開かれていた「オムニバス・ドキュメンタリー 3.11大震災 記者たちの眼差し Ⅱ」(JNN共同制作)の上映会に出かけたのだった。
刺戟になった。胸の中がざわついた。
メディアとは、物理媒体ではなく、そこで行われる行為を含めてメディアだと思ってきたが、まさにそのとおりだと確信した。[3.11]はそのようにメディア状況をスキャンした。マスメディアは、職業としてメディア行為を行うことで成立している。それを入り口にして考えようと思った。こうした現場的行為と[3.11]をめぐるいくつかの言説を突き合わせ、<現場>+<考える>ことで[3.11]を長く・広く・深く向き合うべきだと思ったのだった。
このように書きだして、半分くらいだろう(と、今になって思うのだが、その時はどこが半分かという意識もなかった)、東北被災地視察に出かけたのだった。三陸臨時支局に寄ったのもとても良かった。あとは、あや取り手の志村さんと河尻さん3.11・ソーシャル体験をガイドされながら試行錯誤しながらも何とか書き切った。須田さん、須田ポストも想定していたのだけど、そこまで筆が及ばなかった。ゴメン。
それがFBでも触れた43,000字の作文である。出版は3月予定。
加えて、もう一つ忙しかったことがある。
それは、東北視察について二つのアルバムを作ったことである。一つは、デジタル・アルバムでTBSメディア総研ホームページから入れる。是非ご覧ください。
それとは別に紙焼き写真でアルバムをつくった。トリミングはカッターナイフ、キャプションはテキストをプリントアウトし、現地の地図もネットからコピーして切張した。超アナログの作業だが嫌いじゃない。何かというとこの手のアルバムを作ることにしている。
何がいいと言って、組み写真による構成を一覧性という強みで表現できることだ。写真は嫌いじゃないが、一枚ずつの写真ならもっと優れた、良い写真を撮れる人は沢山いる。だが、ポケッタブルのデジカメでそれなりにという時に、組み写真というのは良い。いうまでもなく、今回は相当力が入った。3日間集中した。
その一部はこんなものだ。「あやブロ忘年会」に持っていこう。
K0eG_DRyIZ.jpgb3rYNA23g0.jpgekrD1E5vuC.jpg                
というわけで、11月はとても忙しかったのだ。

                        □

この原稿を書いている途中で志村さんポストが来た。面白かった。
志村さんメールへの返信にこう書いた。
「アジアの地図を、それも大陸から見た位置関係、つまり日本が上にくるような、で見ると日本海は東アジアの内海そのものだ、と言ったのは歴史学者の網野善彦でした」。そんなことをしなくても、日本列島は大陸にぶら下がった首飾りみたいだ、といったのは網野良彦の甥の中沢新一か、それとも「日本沈没」の著者で、3.11.の後に亡くなった小松左京だっただろうか。日本は地理的にも、歴史的にも辺境だったのだ。
で、このテーマは、日本の近代は何だったかという話に繋がる。志村さんはこう書いている。
「向こうの人と話していて、日本はアジアの一員じゃなくて、ただ『日本』ってことを痛感しました。大きいし、アメリカでもなければ、自分たちと同じでもない。。。という感じです。」
つまり、これはガラパゴス論争に繋がる問題なのだ。ということは、以前に河尻さんが強い関心を示した近代の超克論とも関係する。このことは43,000字でも触れた。まことに日本というのはややこしい立ち位置にいる。それも、ずーっとだ。
といって、所与の条件を変えるわけにはいかない。そこからどうする?
いま、結構大事な、それを考える時代なのだと思う。
あれこれ、いろいろ、柔らかく、まじめに・・・。

などと考えているうちに、網野善彦さんが書いた本に、アジアから見た日本の地図があったのを思い出した。本棚を探して見つけたのが下の地図。想像力というのはホントに大事だ、そう思った。

                     「環日本海諸国図」
_3494biLkk.jpg
dZRJi0g10k.jpg           網野善彦「日本社会の歴史」上(岩波新書)より
                  

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 <アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは“蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいから NHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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