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201410/6

話題のNewsPicksで「テレビイノベーション」という連載を始めました

NewsPicks連載の第1回目の記事に多くの方がコメントをしていただいた。それぞれがレベルが高くこちらの方がいろいろ考えさせられるものだった。そこで今回は、そのコメントに『あやぶろ』の場を借りてお答えすることにした。

そもそもNewsPicksとは何かを説明しよう。
最近、スマートニュースやグノシーなど、ニュースギャザリング・アプリが盛り上がっているが、その中でも最も注目されているNewsPicksだ。注目されている理由はオリジナル・コンテンツにある。他のアプリでは、掲載する記事は他のメディアからの転載だけだが、NewsPicksでは「連載企画」というオリジナルの記事を始めたのだ。ここに私も書かせていただいている。タイトルは「テレビイノベーション」。

週に1回の更新の予定で、第1回目は、「9月18日、テレビの歴史が変わった」だ。
https://newspicks.com/news/623091/
実は本当は違う原稿を載せようと思っていたのだが、先週の木曜9月18日に、民放連の井上会長が会見で、在京キー局5社が見逃し視聴サービスに乗り出す検討を始めるとの発表をしたので、急遽差し替えたのだ。

『全局全番組見逃し視聴サービス』は、テレビが進化する上で決定的に重要だというのは、このあやぶろでも1年以上も前から、編集長が書いてきた。井上会長は、来年度に実験的にスタートすると話しているが、さすがにこんなに早く実現するとは誰も想像できなかったろう。この「テレビイノベーション」の記事は読んでいただければわかるが、見逃し視聴サービスの必要性と困難さについて述べたものだ。

NewsPicksでは、Pickerという様々な方が記事についてコメントを書き込み、さらにそのコメントについてLIKEボタンが付けられている。ただし同じ人がいくつもコメントを書き込むことはできず、2回目の書き込みは上書きされていくので、論争にはならない。このPickerには、堀江貴文さんや、佐々木俊尚さん、津田大介さん、夏野剛さんなど、ネットでも著名な方がおり、そのPickerをフォローすることで、気になる人がその記事について、どんな発言をしているのかを見ることができる。

ここが大いに注目すべき点だ。ユーザーは、記事の内容を読みたいだけではなく、書かれた記事をどう解釈すればいいのかを知りたいのだ、というところに目をつけた、画期的とも言っていい仕組みだ。

ちなみに私の記事にも、非常に多くの方がコメントを寄せてくれている。
いくつか紹介すると、私にこの連載を任せていただいたNewsPicks編集長の佐々木紀彦さんは、

>9月18日、さらっと報道された「全局全番組見逃し視聴サービス」。これは、テレビイノベーションにつながりうるビッグニュースです。

と書いてくれている。また、堀江貴文さんは

>まあ、マネタイズはradikoのモデルが順当かな。

と、至極あっさりとしたコメントを付けてくれた。
その他、350以上のコメントが付けられたが、脊髄反射的に批判するものは非常に少なかった。むしろ記事をしっかり受け止め、中味の濃い考えさせられるものが多く、記事を書いたものとしては、とてもうれしかった。せっかくなので、皆さんのコメントに対して、ちゃんと答えてみることにした。

コメントを内容によって分類した。
(コメントは改行や行空けなどを編集している)

■「番組がつまらないからどうせダメ」と、「番組の質が向上するのでは」 

>いや…これでは全然TVの歴史は変わってへんやん。見逃したモンが見れへんとか、自分の時間に合わせて番組が見れへんとかが理由で『TVはオワコン』って言われてたわけじゃないやん。

>そういうシステム云々やのうて、番組内容がオワコンやと何度言うたら (ry

>コンテンツの向上が期待できないのに、歴史が変わるわけないと思う。今の質の低いコンテンツで、ユーザーの時間を奪い合っている市場で勝てるとは思えない。なぜテレビ離れになっているか、関係者は本質を理解していないのでは。

「テレビの歴史が変る」というタイトルにした時、こういう反応は出ると予想はしていた。
確かに、昔と比べるとテレビ番組はつまらなくなっている。つまらなくなっている理由は、いくつか容易に考えつく。
まず、広告収入の減少と、視聴率の低下が続いており、これ以上、失敗は許されないというプレッシャーで、現場が思い切った冒険をできず、大当たりしなくても失敗しない番組作りに流されている、という理由。
ネットの発達で、批判やクレームが簡単にできるようになり、ノイジーマイノリティーの声が、世の中全体の実態以上に強い影響力を持つようになったことなどだ。
こうした「番組がつまらないから、何をやってもダメ」という意見は、ネットの中では一般的なのだが、こうした声には、なぜそうなったのかや、どうすればいいか、という代案が添えられることはほとんどない。
だからといって無視するつもりはないのだが、その一方、これをきっかけに、番組の質が向上するかもしれない、という意見もいくつもあった。

例えば・・・

>いつでも見れるようになるのなら、よりいっそうコンテンツの質が重視されるようになるのかな。テレビはオワコンとか言われてても、中には面白いテレビもあるので、頑張ってほしい。

>見逃し視聴サービスが普及すると、いわゆる視聴率という指標はどうなるんだろう。すでに、内蔵HD録画で見ている人が多すぎて機能していないが。視聴率至上主義が終焉し、良質な番組が増えることに期待

>マネタイズの方法が多様化すれば、番組の質にいい意味で影響するのでは。

見逃し視聴は、ユーザーの行動履歴を取得できる。視聴率というアバウトな指標よりはるかに詳細で具体的なデータだ。これを解析すれば、どのようなユーザーがどのような番組を好んで見てくれるのかを把握できるようになる。また、視聴率が唯一の指標であるCM以外に、マネタイズの手段が広がれば、番組が目指す方向も多様化し、どれを見ても同じような番組ばかりだ、という状況を打開できるかもしれない。

 

 ■「時間軸編成こそがテレビの命」、「見逃し視聴はかえってよくない」

>みんながこのタイミングで見ているという共時性、「月9」「朝ドラ」「深夜番組」といったように時間ごとに何を見るべきか規定し、生活にリズムを与える時間軸としての機能の2つが、テレビに残された最後のオリジナル機能だと思ってたんだけどなぁ。いつでもどこでもどの番組でも見られるようになったら、Youtubeやその他オンデマンドと差別化が出来なくなって、かえってテレビ局の死期が早まる可能性すらあると思う。

>見逃しても見たいほどの番組は今ないなあ。テレビの強みは、同じ時間に同じ時間を共有するという一体感。そこを生かすためには、生中継を増やすこと。皆、ハプニングが大好きなんだから。たとえば、テレビ東京の池上彰の選挙特番なんかは生でタブーにどんどん切り込んで面白かったし、リアルで話題にも昇ったな。最近は、テレビの話題を出すのって恥ずかしいって域にきているので、そこを越えて話したくなる、共有したくなるコンテンツをどう提供できるかというところ。

>これは本当にいいことか?その瞬間に見ていたという事実に基づく反応、見逃したという事実に基づく反応が人間には必要なのではないか?脊髄反射に近いその場での反応、、いい意味での理解の履き違いが人間の発展に必須だと思うのだが。皆さんはどう思いますか?

短い中に、実に重要で深い考察を込めたコメントだ。こういう鋭い人がコメントをくれるから、ネットは面白い。

「テレビとは何だ?」という命題に、萩元晴彦、村木良彦、今野勉の3人が、『お前はただの現在にすぎない』という名著で回答したのは45年前だ。確かにテレビの本質は、「現在」、「今、この瞬間」にあるのは今でも同じだ。しかしインターネットとスマホなどのデバイスの進化によって、テレビを取り巻く環境自体が変ってしまった。もちろんそんなものを無視して、「今」を大切にするテレビだけを守り抜くやり方もあるかもしれない。しかしそれでは、テレビはメディアのフロントラインから脱落し、過去の遺物になるしかない。これからも金儲けしたいとか、世間に対して威張っていたいとか問題ではなく、面白くないのが嫌だ。元々テレビマンは面白がり好きの人間だ。テレビの未来を面白くするためには、「ただの現在」からの脱皮が、どうしても必要だ。

 

 ■こんなこともできるのでは

いただいたコメントの中には、全キー局による見逃し視聴サービスなら、こんなこともできるのでは、という提案も多くあった。このような提案型のコメントが多いのも、NewsPicksの特色だろう。他のニュースアプリとは大きく違うところだ。

>コンテンツ界の今後を占うようなニュース。これだけのステークホルダーがいるTVコンテンツが動いた。成功の立役者が気になるところ。坂本龍馬みたいなひとがいたんじゃないだろうか。ビジネスモデル関しては、やはり無料を維持するだけの低額のプレミアム会員と、高額プランとしてファンミーティングなどのオフ会をするのはどうでしょう。そう考えると、低額プレミアム会員とオフ会としてのニコニコ超会議を進めてきたニコ動は先進的。

>ただの見逃しをフォローするだけじゃなくて、視聴者がタグとかを付ければテレビでキュレーション出来るとか、仕組みを作ったりした方が面白くなると思う。

>テレビの情報はこれまでサーチエンジンに引っかかりにくかったけどそういうのも変化してほしいよね。あとはクラウドに上がることによる番組の線引とかもユーザーが任意で行なうとか。テレビ番組コンテンツに対してキュレーションする文化が生まれるとそれは面白いとおもいますね。あとは弾幕などによる2次ライブ感の創出とかもいい。

>いい取り組み。番組内の特定コーナーとか分割して一気観とか出来るようになったらいいなあ。

他にも提案型のコメントはいくつもあった。今回の民放連会長の発表は、やはり非常に刺激的だったのがよくわかる。長い間、変化することを嫌い続けてきたテレビが、ようやく自ら変ろうとしたことを、感度の鋭敏な人たちが面白がってくれているのが、とてもうれしい。

坂本龍馬がいたのかはわからないが、1年以上前から、誰もが、出来るわけがないという『全局全番組見逃し視聴サービス』こそ、テレビの未来を切り開くと説いていた人はいる。

■有料化への期待

>やはり有料課金が一番良質なモデル。ネット動画での広告とか正直目障りなものが多い。しかし、そう見るとテレビCMは非常に凝ったコンテンツが多くあり、意外とそれだけ見てても面白かったりする。が、このままのクオリティのCM広告をネットに持っていくと権利者が嫌がる、と。これが変わっていくためにも確かに今回の動きは好意的にとらえられるべき。最初の一歩。今後に期待。

>Webサービスに有料課金するという文化、本当に根付いて欲しい。受益者こそが対価を支払うべきだと思うし、なんでもかんでも広告課金モデルというのは無理がある。タダでサービスを享受するということはお金ではない形で代償を払っているわけだし。そのためにも決済手段がどう発展していくかなんでしょう。

民放連会長は、無料の広告モデルを想定している。確かに見逃し視聴サービスは広告媒体としては、他の動画サイトより媒体価値は高いだろう。しかし、米国Huluが、当初は無料広告型でうまくいかず有料サービスにしたり、米国ネットフリックスが有料で大成功しているのをみると、最初から広告収入に固執するのは得策かどうか、十分検討してほしいところだ。

 

■気になったコメント

>世の中、テレビに限らず優良コンテンツが一回限りで浪費されすぎ。雑誌のバックナンバーとかも含め、一律にではなく、コンテンツごとに消費期限を決め、使いまわしすべき

短いコメントだが、テレビ以外のメディアも視野に入れた、鋭い考察。アーカイブのコンテンツでも商品価値はある。これを生かしていくノウハウ開発は、今後の課題だ。

>このニュースは本当に衝撃だった。後メタ活用等、本丸以外の話題が多かったがまさか、、、という印象。デバイスは、スマホ・PCも入ってくるだろうから、広告モデルだけではなく「リアルタイム視聴」にどう繋げるかが、本当に重要になるはず!

リアルタイム視聴につなげることは、実は最も重要だ。それを理解してくれるユーザーがいてくれることはうれしい。

>僕のようなテレビからほぼ離れた層(それでもサッカー日本代表戦とかスポーツは見るけれど)とか、テレビを家に置かない1人暮らし世帯とかがテレビに戻ってくるかが肝になってきそう

見逃し視聴サービスの大きな効果の一つが、テレビ離れを引き戻す「テレビ回帰」だ。このユーザーも鋭い。

>この業界のイノベーションは内からは難しいのではないでしょうか。外からの破壊者に期待。

>大きな一歩なのは確かですが、ユーザーファーストでサービスを作れるのか、大いに疑問…。とはいえ、期待しています。

今回の民放連会長の決断にもかかわらず、どの業界にも変化を嫌う保守勢力はいるし、むしろそれが多数派だ。しかしテレビの未来は、過去の延長線上にはない。ユーザーファーストというこれまでのテレビの歴史にはない発想を実現できるかは、テレビの未来を占う試金石だ。

■うれしいコメント

>いつでも見られるとなったとしてテレビ番組を見るかどうかを考えた。俺は見る。ほとんどテレビ見ないけど、面白い番組がなくなったわけじゃない。

>安心して視られるのはやはりテレビですね。ネットも楽しみや情報源ではあるけど、一番身近な物としての安心感を与えてくれてます。ネットと同じではない、テレビ独自の良さを作り上げて欲しいと思います。

>テレビでの扱いが非常に小さかったですが、もっとアピールをしても良いと思う。「テレビも変わります!」と胸を張ってPRしたらいいのに。

>これは全力で応援したいし、瀕死のテレビに残された、唯一に近い道のような気が。

>テレビイノベーション、めちゃくちゃワクワクする連載だな。確かにキー局5社によるテレビ番組ネット配信の発表は劇的な変化ではあるが、「テレビの歴史が変わった日」とするのはちょっと大げさかな。今はまだ、旗を掲げただけ。掲げた旗を、実現に向けて掲げ続けられるか、ハードルは多いけど、期待してます。

>この記事いい!わかりやすい。全局全番組見逃し視聴サービスすごい楽しみ。とっても応援してます。おわこんと言われてる出版社やテレビ業界がどんどんチャレンジして変革していくのはとても素晴らしい。

「テレビはオワコンだ」という意見が幅を利かせているネット界だが、インターネット利用率が9割を超えた今、テレビを肯定的に捉えている人は、実はサイレント・マジョリティなのではないだろうか。今回いただいたコメントの中でも、キー局共同の見逃し視聴サービスを前向きに評価してくれる意見の方が、はるかに多かった。コメント数が多く、今回取り上げきれなかった中にも、示唆に富むありがたいものがたくさんあった。

最後の二つは、私自身としてとてもうれしかったコメントだ。NewsPicksに連載を持てて本当によかったとしみじみ思った。この機会をいただいた佐々木編集長と、コメントをいただいたみなさんに、心から感謝します。

 

 

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