『テレビのネイティブ広告』は1社提供がカギ
このたび、氏家編集長のご好意で、あやぶろに寄稿させていただくことになった遠坂夏樹です。訳あって詳しいプロフィールは載せられませんが、某テレビ局で割と幅広い経験をしてきたものです。
メディア、テレビ、コンテンツ、マーケティングなどについてあれこれ書いていこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
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バナー広告やリスティング広告がなかなか効かなくなってきた中、ネット広告の救世主としてネイティブ広告が注目を集めている。ネイティブ広告の定義については諸説あるようだが、大雑把に言えば、広告を掲載するメディアの中で、コンテンツにまぎれてユーザーに違和感を与えない体裁をとった広告とでも表現できようか。
このネイティブ広告はネットだけのものではない。オールドメディアである新聞、雑誌、テレビでも、はるか昔からこのネイティブ広告の考え方は実践されている。
新聞や雑誌では、見た目はまるで記事のようで、記事のつもりで読んでいると広告だったりしたことは誰にでも経験があるだろう。テレビでもワイドショーの中で、生放送の番組と同じスタジオで、番組の流れそのままに自然な形でCMに入る、いわゆる生コマ、生コマーシャルは、テレビのネイティブ広告の元祖とも言える。
最近では、TBSのドラマ「ルーズヴェルトゲーム」でも面白い広告が流れた。「ルーズヴェルトゲーム」では、企業の野球部が都市対抗野球に挑戦するというのが重要な要素になるのだが、そこで流された日本生命のCMが、自社の野球部も都市対抗野球に参加していることを、ドラマの出演者を絡め、ドラマの中の一場面のような形でPRする、ブランディング広告になっていた。また東芝のCMも自社の野球部と絡めて商品紹介をするなど、番組本編の流れを壊さず、逆に利用する形のCMを流した。
詳しくは境治さんが、あやぶろの「テレビは視聴率以外のモノサシを手に入れられるか」というポストで詳しく書いてくれている。
http://ayablog.com/?p=385
通常テレビCMは、トイレタイムなどと揶揄されるように、番組本編とは関係ない内容のものが、番組を分断する形で流される。しかし「ルーズヴェルトゲーム」の場合は、ドラマ本編の流れをそのままにCMに入るので、視聴者はトイレに行くどころか、そのままCMに引き込まれてしまう。視聴者が感じる好感度は、通常のCMとは比較にならないほど高い。これぞ、テレビのネイティブ広告だ。
「ルーズヴェルトゲーム」は複数社が提供する番組だったので、都市対抗野球に参加していないスポンサー企業は、この流れに乗ることはできなかった。複数社提供の番組ではネイティブ広告のような機動力を発揮するのが難しい。これが1社提供であればもっと自由に番組内容と連動した広告企画が立てられる。
特にスマホやタブレットなど、セカンドスクリーン連動ができるようになった今、広告の可能性はさらに広がる。例えばTBSのぶぶたすアプリは、番組ないようにシンクロした番組情報をスマホに流すこともできるし、CMと連動した情報を流すだけでなく、企業サイトやプロモーション・イベントへの誘導もできる。
同様のことは、関西の放送局が中心となって開発しているシンクキャストでも可能だ。
これらは番組内容をCMに反映させることで、CMに入ってもスマホを使い続けることをユーザーに促し、さらにその効果を高めることができる。
ただし事前に情報やイベントなどを、セカンドスクリーン用のコンテンツとして仕込んでおかなければならない。その都合上、1社提供の方がはるかにやりやすいし、効果も上げられる。
ここ数年、テレビ広告は、番組提供によるタイム広告より、機動的に展開できるスポット広告の方が優勢となっている。しかし、テレビのネイティブ広告という観点から見たとき、番組の提供社になること、特に1社提供になることのメリットは以前よりはるかに高くなっている。
近年、1社提供番組は減り続けているが、見直すべき時期に来ているのではないだろうか。単に商品やサービスの認知度を高めるのではなく、企業イメージや商品のブランドイメージを高めるためには、テレビのネイティブ広告をうまく利用すべきだ。1社提供は確かにカネはかかるが、それに見合う新たな広告効果もあるはずだ。もちろん番組内容が良質であることは言うまでもないが。
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