あやぶろ

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20122/12

ラスベガスの移動する中心

ラスベガスのストリップ
ラスベガスで今いちばん盛り上がっている場所は、「シティセンター」と呼ばれる一角だ。エッフェル塔やピラミッド、ローマ、摩天楼が乱立していた昔のモノマネ文化とは全く違って「Aria」や「Cosmopolitan」「Mandarin Oriental」といったモダンなホテルが建っている。
スクリーンショット 2014-08-23 15.56.54        ラスベガスの目抜き通り「ストリップ」
もっとも、「Aria」のスパは「GANBANYOKU」がウリだし、「WAGYU」、「KABOCHA Squash」「SAKE SUSHI Socialize」とか、至るところに日本をマネている部分を観察できるのだけど。。。
スクリーンショット 2014-08-23 15.58.22

ラスベガスのホテルは巨大で20分以上歩かないと隣までたどり着かない。そんなホテルが「ストリップ」という目抜き通りの両側に並んでいる。
ストリップの北の端には、1970年代エルビス・プレスリーが公演をした「ヒルトン」や映画の舞台になった「リビエラ」があり、いちばん南は「マンダレイ・ベイ」があって街が終わる。南北10kmくらいだ。
ところが、ストリップと直交する道は全く栄えていない。街が面に広がらない。
つまり、なにかラスベガスの中心があって、そこから同心円に街が広がるのではなく、中心そのものが道沿いに移動する。
そんなラスベガスの街を歩いていて、ヨーロッパの街とは全然違うなぁと考えていた。街の中心に教会があり、その前に広場、ときには市庁舎がある。そして、そこから四方へ道が延びている。つまり、中心部があってその周りに街が広がっている。
この違いは何なのか?
同心円は、中心と中心があったほうが利益になる受益者たちが形成した結果だ。いっぽう、道を移動する盛り場は、中心も受益者もいない。新しいホテルは、新しい場所に建って人を集めるのだ。
イノベーションは「辺境から」でなく「辺境で」起こる。新参者に「中心から」という視点は無い。
通信も外部世界が拡大する
ラスベガスでは、スマホやタブレットの拡大を目の当たりにした。2012年、全世界でテレビは2.6億台販売され、ケータイ端末はその6倍の17億台売れる。スマホは17億台のうち約40%、7億台だ。通信トラフィックは5年で35倍になる。管理する側も追いつかない。
その結果、通信ネットワークは、通信キャリアが管理しない外部世界が拡大している。
たとえば、既に国際電話の30%はスカイプ(去年マイクロソフトに買収された)で行われている。2012年1月には、米国ノース・カロライナ州で世界初のホワイトスペース帯のWiFiネットワークが開始された。
米国の通信行政は、規制緩和に舵を切る。自由市場のほうが、イノベーションを生み、雇用を産むと考えているからだ。
というか、常時接続なスマホが広がれば、それしか方法が無い。


伝送路議論とメディア論
河尻正月論文と前川センパイの「クリエイション」議論と稲井さんのイノベーション議論は、このスマホ、ネット領域をいかにテレビが取り込むのかについて議論を深めている。
メディア論に入る前に、一度伝送路議論に決着をつけなければならないだろう。
よくある放送とインターネットをその同時送信数の違いや分散と集中的な論点から話すのはもう古い。なぜなら、インターネットでも、アマゾンの「Silk」のようにクラウド側で処理をし、機器は単機能になるという放送型な仕組みもある。ネットと放送の違いなんて、使い手の想像力でいかようにもなるのだ。
そして「テレビ画面」の堅持より優先すべきは、スマホやタブレットへの伝送路確保が重要な点だ。さらに、重要なのはネットと聞いて思考を硬直させるのではなく、「放送的」伝送路で進出すべきだ。つまり、放送文化を守りたいなら、伝送路の哲学を守るべきである。その哲学とは、一方向性だ。ネットと同じことはしないことだ。ここまでは、ビジネス・クリエイション。

場の整備が終わったら、メディア論の出番だろう。ここは、河尻さんが提唱する「ソーシャルパーソン・ユニオン」が素敵だ。自分も参加したい。スマホやタブレット上には、今まで紙やテレビが届かなかった人たちがたくさんいる。国家を担保した権威が届かない人たちだ。彼らはIT的情弱かもしれないが、経済的社会的には全く弱者ではない。管理を超え、国境を超える外部の人たちである。こうした人相手のメディア・コンテンツは今までの文法では作れないだろう。だからこそ、作り手の遊民的感覚が重視される。(今まで中の人はどうなるのか。それについては昨年「空虚vs.空腹」議論にヒントがある。(コチラも参照)
ラスベガスの「ストリップ」で盛り上がるスポットはどんどん移動する。時代に合わなくなったホテルは廃れる。新しいホテルはお構いなしに栄える。変わらないのは「カジノホテル」をしている点だ。そこは流されない。
テレビも「テレビ画面」から広がる同心円ではなく、スマホやタブレットに「ストリップ」を移動すればいい。伝送路の哲学を守りながら。
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka

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