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20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点④

ストレンジなリアリティー:ガンダムUC ep7を見て考えたこと

 

『機動戦士ガンダム』は30年以上前に、フォーマットが作られた作品ですが、2010年代に入っても、新たな作品がつくられています。
先日、ガンダムの最新作、ガンダムUC(ユニコーン)の最終作を映画館で見た時に、”ルールチェンジ””未来の書き直し”という言葉が浮かび、これは、『まどか☆マギカ』など近年のアニメ作品ともつながるし、ある種の世代交代を考えるヒントになるなと思いました。そんなわけで、お読みください。

 

■劇場版ガンダムⅢ(1982)のエンディングメッセージ
32年前の夏に、劇場版ガンダムの三作目として、『めぐりあい宇宙』が公開され、そのエンディングは富野監督から観客への“And now…in anticipation of your insight into the future.”というメッセージで締めくくられました。
(余談ですが、”そら”と入力すると、宇宙と変換されます。宇宙をそらと表現したのは、この作品からです。年号を見て8歳でひとりで映画を見に行っていた自分自身に驚きました。)
このあと、富野監督の意向とは関係なく、次々とガンダム作品がスポンサーの力に富野監督が引きづられる形で作られていき、富野監督は精神的にもダメージを受けつつも作品を通じて回復し現在に至ります。
最新作であるガンダムUCでは、富野監督の助言は非公式で存在するものの、制作は監督の手を離れており、最初のガンダムのエンディングメッセージを見て育った世代がつくった作品になっています。

 

■ガンダムUCは、『ルールを見直す』お話でした。
ガンダムというとモビルスーツが戦うアニメという見方が一般的ですが、最新作の内容は、『宇宙に進出した人々が、宇宙に適応した新人類になった時、その人達を優先的に(世界)政府運営に参加させることにする』という条文を地球連邦政府側が用意していたにも関わらず、政府内の策謀によるテロでこの条文は公開されることなく失われ、この条項が削除された条文が宇宙世紀憲章として発布されます。その結果、宇宙に進出した人々には政府運営に参加する機会が与えられず、地球から阻害されたと感じるようになり、やがて、全人口の半分を死に至らしめる独立戦争となる(これがいわゆるファーストガンダム)のですが、実は、この条文を刻んだオリジナルの石碑が保存されており、その公開を巡って各勢力が争い、最終的に公開されるというのが、ガンダムUCでした。

 

最初の条文が公開されていれば、独立戦争の種となるものがなくなるわけで、いままでのガンダム作品での数々の戦争、紛争は起こらなかったかもしれないという視点が、ガンダムを見て育った原作者の息子世代から提示されています。

 

この一点、つまり作品世界のルールに言及した点で、この作品は傑作です。
いわゆる勝ち負けは、ルールのあり方でどうとでもなってしまうのですが、ルールを是として疑わず受け入れると、結局は、枝葉の部分をより派手に演出しつつ物語を繰り返す現象が起こります。それはパワーのインフレとなってゆき、シーンそのものを消費していきます(たとえば『ZZガンダム』(1986)のように)。

 

『超時空要塞マクロス』のバルキリーなどをデザインし、近年はマクロス作品のプロデューサーである河森氏はあるインタビューで、アニメ作品を作る若い世代が設定ばかり気にして、物語をつくろうとしないと苦言に近い指摘を行っています。同じような指摘を最近、京都精華大学の竹熊教授も行っており、漫画原作をつくる課題に、設定を膨大につくってくるが、物語を提出できないと危惧を呈しています。
ガンダムUCでは、オリジナルの石碑の持ち主は、連邦政府と結託する関係を持ち、書き換えられたルールによって歪んだ世界を維持する体制側であったのですが、2つのことをきっかけに石碑を公開しようとします。
ひとつは、宇宙に住む人に与えられた自治権が残り数年で切れることへの危惧。もうひとつは人間の心を部分的とはいえ具象化するテクノロジーの実現です。このテクノロジーは、物語内ではサイコフレームと呼ばれています。ここはSFですが、現実にも、コミュニケーションの形は、身体に入り込み、プライバシーに踏むこむ形で、刻一刻と変化しており、一概に荒唐無稽と切り捨てられません。
また、これまでの富野作品では、ニュータイプは個人の内側からくるもののようにも描かれていましたが、作品ギミックとしてのテクノロジーの提示によって、テクノロジーという個人の外側から、変化が生じる描写が行われています。

 

人類の半数が失われるほどの戦争が行われ、何十年も紛争状態にありながら分かり合えない人々。
お互い名前も知らないのに会った数分でわかりあえてしまう人と人。
という極端な二種類のコミュニケーションが作品内で提示されるのですが、
この二種類のコミュニケーションが対比されることで、世界の可能性をどちらに見出すか?という物語構造が提示されます。

 

ガンダム世界には宇宙世紀という年表があります。(これも受け手でありファンがつくり、送り手である制作側が公式にするという世界的に見ても類稀な現象の結晶でありますが、また、別の機会に。)
このガンダムUCの後の時代もすでに年表があり、作品も発表されているのですが、ガンダムUCのエンディングは、決まっていたように見える未来-年表を書き換える物語の可能性を感じさせるものになっています。

 

数少ない欠点を挙げるとすると、これまでの歴史的文脈、作品の蓄積を踏まえないとわからないことが多く、90分の映像作品として見たときの情報伝達として苦しい点があります。そのためだと思われますが、ファーストガンダムから、本作品と繋ぐ30分のアバンタイトルが加えられています。
しかし、現在の映像作品は繰り返し観られること、ファンによる解析も含め継続的な情報伝達が可能ということもあり、映像作品の提供デザインとして最適解なのだと思います。

 

ガンダムUCの結末はさておき、ルールを見直す構造を持った近年のアニメ作品の傑作は、『まどか☆マギカ』です。これもいわゆる魔法少女作品の系譜に存在したルールが原作者によって疑われており、登場人物は物語世界のルールを自分自身も含めて書き換えます。
ルールゆえに、どうしようもなく物語は繰り返され、それゆえに絶望が生まれ続ける中で、その絶望を断ち切るために新たなルールを創造するという物語です。
一方、『まどか☆マギカ』(2011)と同じ原作者による『サイコパス』(2012)では、世界を運営する歪んだルールが露呈しますが、嫌悪感を受け入れつつもそれを受け入れる、即ちルールを継承する物語が提示されます。
世界のルールに着目した作品としては神山監督による『東のエデン』(2009)がありますが、この作品ではルールそのものは操作されることなく、ルールの周辺で物語が動きます。
『新劇場版ヱヴァンゲリヲン 破』(2009)では、原作者が作品世界を繰り返しつつ、ルールを見直し、物語を自ら書き換えるということを行っています。

 

私は、音楽でも映像でも、送り手の意識に関わりなく、現実世界を少し先行して断片的に見せる依代的な要素があると考えています。
こうして近年のアニメ作品を振り返ると、作品のジャンルや作品世界のルールを前提として受け入れるのではなく見直したり、再構成する傾向が続いているように見えるのです。

 

■ 地球に降下するのに、画面上にある地球に向かう感覚
ガンダムUCで、私が「おぉ」となった演出に、画面上の左上にある地球に、宇宙戦艦が降下するという描写があります。
つまり、地球に降下することが、画面上に上昇するように見えるのです。
この360度的感覚、地球の重力を相対的に捉える感覚を日常的にもてるかどうか?これが、次の何かをつくるときにとても重要であるとここのところ考えています。

 

日本にはあまり疑われないが、よく考えるとおかしいルールが多くあります。「国土の均衡ある発展」というのも、一種のルールとして機能してきました。
しかし、実際には税金を過剰に投入する口実となって機能しただけで、今後30年後に消滅する自治体が生じるという報告が発表され波紋を呼んでいます。
「少子化対策として婚活を政府が支援」、「住宅は不動産だが、消費税がかかる消費財」「メディアの不偏不党」挙げればいろいろあります。
そして、
「世論調査で国民の意思がわかる」
というのも日本の民主主義社会のルールのひとつだと思いますが、これは間違っています。この間違いの上に、意思形成が行われることで、間違いの屋上屋が重ねられています。
こうしたルールに基づく、間違えの繰り返しを止める方法には、地球に降下するのに画面内では上昇するようなストレンジなリアリティが求められると思うです。

 

続くー

 

 

 

岩田崇/ iwata Takashiプロフィール
1973年名古屋で生まれる。が、箱庭的風土に疑問を感じて上京。早稲田大学卒、広告業界でマーケティングプランナーとして販促企画から企業のネット コミュニケーション戦略の策定・実施を手がける。仕事を通じて、政治分野へのマーケティングとコミュニケーションの応用が今後の日本社会に必要と考え、慶 應義塾大学大学院 政策・メディア研究科に入学。
修士研究では、政治学の曽根教授、行政改革の上山教授に学び、合意形成に繋がる議論の場がない日本政治の機能を補う仕組みとして、オンライン政策ファシリ テーター:『ポリネコ』を開発、特許化。また研究とは別の発明として、企業と社会のつながり視覚化する方法を開発し特許化。
フジテレビ『コンパス』、朝日新聞『オルタナティブニッポン』では、既存メディアとソーシャルメディアの組み合わせによるコンテンツを企画開発、新潟市では公共交通の再構築にも携わる。
現在は、メディア環境の変化を踏まえ、合意形成コミュニケーションメディアとしての『ポリネコ』の実用化、新しいニュース、討論番組の開発などに取り組む。
「Challengingな仕事、大好物です。」 twitter:iwatatakashi

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