あやぶろ

多彩な書き手が、テレビ論、メディア論をつなぎます。

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20146/16

テレビというコミュニティ。あやブロというコミュニティ。

あやとりブログに文章を書くようになってかれこれ二年以上経ちました。2011年に出した『テレビは生き残れるのか』を読んでくださった氏家編集長からその年末にFacebookでお声がけいただき、ランチをご一緒しました。初めてお会いしたのに話が弾んだのはつい昨日のようでもあり、遠い昔のようでもあり。ちょうど同じTBSメディア総研発行の『調査情報』に寄稿したことも含めて、大変光栄に感じたことを憶えています。

“ソーシャルテレビ”の動きに注目しはじめた時期だったので、最初は「テレビのイノベーションの鍵は、ソーシャルテレビにある」と題した記事を書き、その次には「メディアはコミュニティになる。コンテンツはコミュニティになる。」という記事を書きました。ソーシャルメディアによって視聴者とやりとりすることができる。それはテレビがもともと持つコミュニティ性を高めるのだ。そんなことを言っています。

テレビが持つコミュニティ性とは、よく言う「テレビドラマの話を翌日学校や職場でする」という現象が顕著です。人びとの集団があると、それに対応したメディアが必要になる。逆にメディアがあることで、人びとが何かを共有できる集団になるのです。そしてこれまでのテレビにとってのコミュニティとは日本全体でした。

コミュニティは“ブログ”というメディアでも時として形成されます。「クリエイティブビジネス論」というブログをコツコツ書いていたら、読んでくれている人たちとのコミュニティがぼんやりできてきて、勉強会に発展しました。

同じようにあやとりブログにも、ゆるやかなコミュニティが形成されています。氏家さんは定期的に執筆陣を集めて飲み会をやってくださいます。これがあやとりブログの第一次的なコミュニティです。そこでぼくも多くの方と出会いました。このコミュニティでは初対面でもすぐに打ち解けあえます。なにしろ、顔を合わせる前にお互いの“論”を知っているのですから。互いに知っているといえば、深く知っているわけです。所属する会社や仕事のことを知るより、文章を読んで考え方に触れている方が、すぐさま打ち解けあえます。ブログに書きにくいことも、この“筆者コミュニティ”では思い切って言っちゃえたりもします。

「あやブロナイト」のタイトルでトークイベントも2回ほど開催されました。このイベントは第二次的なコミュニティ。そこで知りあった人もいますし、別で知っていた人と思わずイベントの場で再会したり。そうすると「そうですか、あなたもあやブロ読者ですか」「いや境さんの記事はよく読んでますよ」同じ領域に興味があるんだなと再確認できるのです。

さらに、例えばローカル局の方と出会って「いつもブログ読んでます」と言われることがあって、ぼくのブログは読者数激増中のハフィントンポストに転載されているので「あ、ハフィントンですか?」と言うと「え?・・・いえ、あやとりブログです」と言われたりします。そうか、テレビ業界の方は読んでくれているんだなとうれしくなります。そういう、直接会うことがなくても読んでくれてる人たちは、第三次的なコミュニティだと言えるでしょう。そしてそこでも“あやとりブログ”が電撃的に共感をもたらす魔法のキーワードになるのです。あやブロ読者なら、問題意識を共有できるんだなと。

あやブロのコミュニティ性から、逆にテレビのコミュニティ性をとらえると、テレビの姿がもう一度再認識できないかな、と思います。

例えばさっき、テレビは日本全体というコミュニティにとってのメディアだったと書きました。でも、もうそんなこと、無理ですよね。いや例えばワールドカップの試合ではテレビがまさしく日本全体のためのメディアになりました。それをもってして、ほらテレビにはまだまだ価値があるじゃないか!と言いたくもなる。

ただ、そんな瞬間は年に数回しかないでしょう。じゃあやっぱりテレビの価値は下がっていくだけなのか?そうじゃない。テレビが支えるコミュニティは何も、日本全体でなくてもいいじゃないか、とぼくは思うのです。
ドラマ『ルーズヴェルトゲーム』はよく『半沢直樹』と比べられて、柳の下のドジョウを狙って失敗してるとか、同じ原作者の『花咲舞が黙ってない』に視聴率で負けてるとか、いろんなこと言われています。

でもぼくはこのドラマを不思議な気持ちで見つめてきました。『半沢直樹』のような続きを知りたくなるわかりやすい面白さはありませんが、何か引き込まれるところがある。このドラマはその奥から、必死になって何かを問いかけている。そんな気がしています。会社って何なんだよ。会社員って何なんだよ。そこで頑張っちゃうのって何なんだよ。そんなことを、悲痛になって訴えかけている。そんな風に見てきました。

セミファイナルと銘打たれた、6月15日の放送で驚いたことがありました。CMの時間にドラマの中の野球部の監督とキャプテンが出てきて「日本生命の野球部が強いぞ」という会話をはじめたのです。つまり日本生命のCMをドラマの設定を使って展開している。こういうの、最近増えてますよね。CMの時間になってもチャンネルを変えさせませんよ。そんなセールストークでスポンサーを逃さない策の一種なのでしょう。

でも『ルーズヴェルトゲーム』で企業の野球部の話をCMの題材にすることには、「ああ、最近よくある手法ね」という意味以上の、深味みたいなものがあります。何しろ(これは観てないとわからないでしょうけど)会社というものの精神的な価値を訴える重要な題材として野球部が描かれているドラマです。日本生命の野球部の向こうに、ドラマみたいな感動的な現実があるのだろうと勝手に想像してしまいます。野球部を通して視聴者がドラマの中の青島製作所に思い入れるように、日本生命にも共感を持ってしまいます。

そうすると、『ルーズヴェルトゲーム』の提供枠を持っていることが、日本生命にとって他のCM枠以上の価値になってきます。強い“共感”を視聴者に持ってもらうための提供です。このドラマだからこそ、特別な価値が出るのです。

『ルーズヴェルトゲーム』は視聴率で言うと15%程度です。でも一定の数の社会人はこのドラマに集まっています。日本中を巻き込むドラマではありませんが、特定の人びとは毎週見ているのです。それはさっき書いた何かを懸命に訴えかけているドラマに引き込まれているからでしょう。そこにはなんとなくぼーっと見ている視聴者とはちがう、何らかの傾向を持った人びとが集まっている、つまりコミュニティがぼんやりできているのです。

そこに日本生命の野球部をドラマの登場人物が語るCMが流れると、日本生命が一気にそのコミュニティの仲間になる、そんな現象が起こったのだと思います。

そこには、視聴率とは別の計り知れない価値があると思います。そしてその時に、15%程度という“まあまあ”という数字が、莫大な共感をもたらす価値にもなります。もしあのCMに「いいね!ボタン」がついていたら、何万いいね!では済まない、おそらく数百万いいね!の共感が生まれていたでしょう。これはネットには絶対にできない爆発的な効果です。

テレビはコミュニティだと、つまり共感を爆発的にもたらす装置だととらえる。そこには大きな大きな価値があり、これからのテレビの生き残り方のひとつが見いだせるのだと思います。

ところであやとりブログは、聞くところでは今週いっぱいで新たなステップに向かう準備に入るそうです。ということはつまり、あやブロというコミュニティも次のステップを踏み出し、きっとさらに大きな人びとの輪ができるのだろうと期待しています。これを読んでいるあなたも、ぜひまたそのコミュニティに参加してください。ひょっとしたらその輪を通じてお会いできることもあるかもしれませんね。そんな日を、心待ちにしています!

 

境 治 プロフィール
フリーランスのコピーライターとして長年活動したのち、映像製作会社ロボット経営企画室長・広告代理店ビデオプロモーション企画推進部長を経て再びフリーランスに。2011年7月に『テレビは生き残れるのか』を出版。
ブログ「クリエイティブビジネス論」:www.sakaiosamu.com
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
Facebookアカウント:www.facebook.com/sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
テレビは生き残れるのか (ディスカヴァー携書)

 

 

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