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20135/2

ネット選挙をきっかけに、テレビがもっと面白くなってほしい

諸先輩方、しかもテレビや広告の世界を生き抜いている先輩方に連なり、その連名の末席に身を置かせていただくこととなりました。はじめましての方も多いと思いますので、簡単に自己紹介をさせていただきます。江口晋太朗と申します。日頃は、編集者として、様々な分野の領域を横断しながら媒体での企画や執筆、編集に携わり企業の戦略立案やコンテンツ企画制作、プロデュース、ファシリテーターなどをおこなっています。

同郷である境治さんのご紹介と、ゲストでお声がけいただいた編集者の河尻亨一さんが主催するキュレーションラボつながりなど、日頃からお世話になっていらっしゃる方々からのご推薦をいただき、こちらのあやとりブログで書かせていただくこととなりました。暫定最年少で大変恐縮していますが、頑張っていきたいと思います。

2013年現在、ほんの数年前ですら考えもしないくらい、テクノロジーの進化は日々加速度的に増してきています。20年前の1993年4月30日、CERNがWWW(World Wide Web)を誰でも無償で開放したことが、ウェブの始まりと言われています。つまり、ちょうど20年前にウェブがスタートしたんです。私は1984年生まれですが、同年代は20代後半から30歳前半の年齢に達しようとしており、インターネットの成長と既存メディアの変化の狭間といった2000年代前後を、10代という多感な青春時代を過ごした年代でもあります。ウェブの誕生以降に青年期を迎えた80年台以降生まれの人たちが何を考えているのか。テレビのみならず、あらゆるメディアが身の回りに溢れ情報量も爆発的に増えている社会で起きているあれやこれやを、私なりの考えを踏まえながら色々と書いていければと思っています。

 

ネット選挙をきっかけに、ネットと政治のあり方を見つめ直す

さて、最初の話にしてはいささかお固い内容かもしれませんが、つい先日の4月19日、国会で1つの法案が通過したことが大きな盛り上がりを見せています。公職選挙法の改正法案が通過し、インターネットを利用した選挙運動が、今夏におこなわれる参議院選挙から解禁されるようになりました。私個人としても、インターネット選挙運動の解禁を目指して立ち上げたOne voice Campaignの発起人メンバーの一人として、インターネットというツールが政治の世界が次の新しい可能性を模索する環境へと踏み出す第一歩を踏んだ、1つのエポックメイキングな出来事だと感じているため、最初のお題として少しばかり書かせていただければと思います。

今回の改正案によって、選挙期間中(公示日もしくは告示日から投票日前日まで)もホームページやブログ、ソーシャルメディアといったインターネットによるツールを使った選挙公報活動ができるようになりました。ただし、有権者などの一般の人は、電子メールによって一般人同士による選挙活動(特定の立候補者に当選を促したりする活動)は、禁止されています。

ネットによる選挙活動で、何が大きく変わるのでしょうか。まず第一に、候補者の情報が有権者に届きやすくなる議員側のメリットがあります。これまでは、選挙期間中は限定的な手段でしか情報発信をすることができず、選挙期間中におこなう演説会の案内も、特性の層や昼間の時間帯が利用できる一部の有権者にしか情報が届いておらず、浮遊層など投票を迷っている人たちに届ける手段がほとんどありませんでした。議員事務所に政策についての質問をメールで送っても、選挙期間中は返信できず(メールの返信によって選挙活動とみなされる可能性があるから)、Twitterで質問をしても議員はTwitterも使えない状況で、公示日の23時59分で「ここから、2週間つぶやきがストップしてしまいますが、有権者のみなさんよろしくお願いいたします。」なんていう、変わったTwitterの書き込みがされる珍奇な現象が起きているのです。選挙期間という有権者が一番政治や政策に意識が向いている期間に、その意識に応えるだけのコミュニケーションツールがなかったのが、今までの状況だったのです。

「ネット選挙の解禁は、誹謗中傷や成りすましの可能性が大きいから駄目だ」という声が、解禁前からよく言われていました。しかし、インターネットをまったく考慮してなかったこれまでの公職選挙法では、ある意味でネットに関するあらゆることが「無防備」な状態になっていたのです。当たり前ですが、これまでは2ちゃんねるやTwitterなどのSNSで誹謗中傷や成りすましがでても、実の本人がそれをネット上で否定したり反論したりできない状態で、野放しにしているも同然のような状況でもありました。もちろん、罰則規定も盛り込まれていません。もちろん、今回の改正でネット上での誹謗中傷や成りすましには、きちんと罰則規定も設けられています。議員側からすれば、今回からネットが使えることで公式な場として自身の声明文をネット上で発信することができ、デマや誹謗中傷に対処する反論メディアとして機能させることができるのです。

もちろん、ただの情報発信の側面だけではなく、「インターネットを介したあらゆる出来事」を政治の世界や公職選挙法に盛り込んだ、まさに政治の世界におけるインターネットの”市民権’を得たと言っても過言ではありません。ただの情報発信だけでなく、政治家が、より積極的に有権者の声を聞く姿勢も問われてきます。これまでの一方通行から、有権者と政治家が同じ目線にたち、それぞれの役割で社会全体を良くしていこうと働きかけることを、互いに対話しながら進めることができ、その補助としてインターネットを介したコミュニケーションが活きてくるようになるのです。

議員だけでなく、有権者側にも色々な活動ができるようになります。SNSやブログなどでキャンペーンサイトを開設し、ネガティブキャンペーンだけでなくポジティブキャンペーンといった、個人で議員を支援する行動ができるようになります。先の衆議院選挙では、Facebookを使って未成年が擬似選挙をおこなうウェブサイト「Teens Opinion」が立ち上がりました。もちろん、このサイトは選挙活動ではないため可能だったサイトですが、こうした一般の人達が自分たちの考えを表現したりすることで、政治に参加する方法が多様化する可能性は大いにあると言えるでしょう。特定の候補者を応援するための応援ソングをウェブにアップしたり、バイラルさせる動画をもとに有権者の認知を図る活動は、ネットならではの様々なものを組み合わせたマッシュアップコンテンツの1つとして、様々な話題となるコンテンツが出てくるようになるでしょう。

(次のページに続く)

 

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