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20135/1

日本のテレビ・フォーマットが世界を熱くする! カンヌ官民連携イベント大成功!

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放送8局代表登壇!

 カンヌ国際テレビ見本市MIPTV(ミップ・ティビー)が去る4月8日~11日開催された。
今年は開催50周年を祝うさまざまな記念行事も行われ、いつにも増して華やかな雰囲気が漂っていた。カンヌ50周年にちなんだ「世界のテレビを変えた50作」に、TBSの『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』が、日本の実写作品(厳密には、全アジアの実写作品)で唯一選出されるなど、TBSにとっても記念すべきカンヌ見本市となった(詳細は、TBS海外番販ホームページで: (http://www.tbs.co.jp/eng/programsales/news/jp2013032716.html)。

【“Treasure Box Japan”とは?】
今回の本題は、MIPTVではなく、これに先駆け、4月6日と7日の両日に行われた番組フォーマットに特化した国際イベントMIPFormats(ミップ・フォーマッツ)。ここで、会期2日目の4月7日、日本の最新テレビ・フォーマットを世界にお披露目するべく、“Treasure Box Japan~World Premiere! Brand New Formats!”(トレジャー・ボックス・ジャパン ワールド・プレミア最新フォーマッツ)を開催した(※1「番組フォーマット」)。

“Treasure Box Japan”は、昨年のMIPTVでテレビ朝日が提唱し、半年あまりの準備期間を経て、秋のカンヌ国際見本市MIPCOM(ミプコム)で第1弾が開催された。今回は第2弾で、前回の放送7局(在京6局、NHK/NEP・日本テレビ・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビと在阪の朝日放送)に今回、在阪の読売テレビが加わった。総務省と経産省の支援を受け、8つの放送局が連携し、官民連携の「オール・ジャパン」体制で行われた。
昼過ぎから始まったプレゼンテーションでは、まず、日本発祥のフォーマットが、どれくらい世界的なヒット番組をもたらせているかを、各国版の映像を用いてVTRで紹介した(各局の実績は文末)。去年の第1弾のパーティーの際に使用したVTRではあるが、それまで、日本発祥の世界的ヒット作を一挙に見せたことはなかったので、初めて見る聴衆には相当なインパクトがあったと思う。また、欧米関係者も多いカンヌで、これが出来たのは日本の実績(実力)を世界に印象付ける意味でも効果があった。
まさにそこが「掴み」部分の狙いだったのだが、実際、「日本発の世界的ヒット番組があんなにたくさんあるなんて知らなかった」とのコメントも複数いただいた。その後、8局がそれぞれ持ち時間5分で、海外では初お披露目の「イチオシ」最新フォーマットを紹介。完成度の高いVTRの上映とプレゼンターによる解説を全編英語で行った。テンポの良い進行に、聴衆も熱心に見入っており、大うけしたり、涙を誘う場面も見られるなど、270名収容の会場は満席で、途中で会場を立ち去る人もほとんどなく、立ち見が何人も出るほどだった。
欧米系関係者も半数以上おり盛況だった。

TBSのプレゼンは6番目で、『炎の体育会TV』のフォーマットを紹介(TBSのプレゼンターは、長年フォーマット販売を手掛けるTBSサービス・山本将志)。既存のスポーツに捻りを加えた独自の競技の数々は、特に欧米系関係者の興味を引いていた。
後で聞いた話だが、会場が早々に定員超過となったため、防災上の理由から途中で入口が閉鎖されてしまい、入場できなかった人達もかなりいたとの事。また、効果は半信半疑だったが、数枚でも持って行ってくれる人がいればと、入口付近に置いた各局フォーマットのチラシも、途中で無くなってしまうという嬉しい誤算もあった。会場が半分も埋まらなかったらどうしようという関係者の心配は、ありがたいことに杞人之憂で済んだ。

また、韓国関係者が、「日本人には直接言えないが、日本のプレゼンは皆プロフェッショナルで上手だったし、フォーマットのラインアップも豊富で羨ましい」と漏らしていたと欧米のVIP関係者から聞かされた。

各局のラインアップは以下:  ※(  )内は原題
NHK/NEP  「BrainFlash!」(『伝えてピカッチ』)
日本テレビ 「A-HA!Experience」(「A-HA!体験」『世界一受けたい授業』のコーナー)
テレビ朝日 「No Brainer」(『クイズ!スピードキング』)
TBSテレビ  「Athletic Fire」(『炎の体育会TV』) テレビ東京 「What’s Daddy!」(『世界で働くお父さん』)
フジテレビ 「CLOCKHANGER」(「ぐるっと一周クイズ」『ピカルの定理』のコーナー)
朝日放送  「Far Away Neighbors」(『世界の村で発見!こんなところに日本人』)
読売テレビ 「The Secret is out! Hometown Pride」(『秘密のケンミンSHOW』)

引き続き行われた“Treasure Box Japan”主催のランチでは、軽食やドリンクに加えて寿司なども振舞われ、座る場所がないほどの大盛況。プレゼンテーションを見た人からの引き合いが各局には立て続けにあり、商談も活発に行われた。 スクリーンショット 2014-07-22 14.50.34

 軽食ランチも満員御礼!

 【重視したパブリシティ戦略】
今回のプレゼンは、ALL JAPAN体制で日本のプレゼンスをカンヌに集う関係者に示すだけでなく、日本のフォーマットの素晴らしさを世界にアピールすることを目的としていた。このため、カンヌに集えない世界各国の関係者が実数としては遥かに多いことも踏まえ、世界に向けた情報発信にも比重を置いた。

これまで、日本が手掛けた「国際」イベントは、世界に拡散効果を持つ主要英語媒体で報じられる機会が少なく、海外関係者の間での知名度もいまひとつ伸び悩んでいる。
存在を広く世界に効果的にアピールするには、英語媒体での情報打電が必要不可欠であることを踏まえ、今回のイベントは、自社ネット媒体を併せ持ち世界的に大きな影響力を持つ英語業界誌4誌(Hollywood Reporter誌、Television Business International誌、Television Asia誌、C21誌)に加えて、MIPTV開催期間中連日発行される日刊誌にも積極的に情報を提供した。

これにより、日本のフォーマットに関する特集記事を複数誌で組んでもらえた。また“Treasure Box Japan”の広告を全誌に出稿したこともあって「日本のフォーマットここにあり!」を世界中の関係者に印象付けることができた。

【中韓の動き】
“Treasure Box Japan”は、元々、国策推進でカンヌでも急激にプレゼンスを増している中韓に刺激されて提唱された側面もある。
MIPFormatsでも、中韓両国はプレゼンを行っていた。
中国は、フォーマット輸出の視点からではなく、近年如何にフォーマット輸入大国になっているかという逆の視点からのプレゼンで、それなりに興味深かった。売れるフォーマットが無いから、と諦めてしまうのではなく、それを逆手に取るあたり、やはり「したたか」である。

欧米のセラーにとっては、今や、なかなかフォーマットを購入しない日本よりも、中国の方が輸出先としては魅力が増しているとも言える。
一方の韓国は、KOCCA(韓国コンテンツ振興院)の先導の下、大手各局が自社フォーマットをプレゼンしていた。

やや驚いたのは、冒頭でKOCCAの関係者が、韓国は今まで日本のフォーマットをパクっていた、とあっさりと長年の侵害行為を認めた点。今は違うという点を強調したかったのだろうが、独創性は感じられず、日本の番組フォーマットの影響を依然受けている感は否めなかった。
両国とも、プレゼン用のVTRを英語化さえしておらず、プレゼンターの解説も稚拙で、誰がみても日本の方が現時点ではまだ圧倒しており、正直、恐れるに足らずとの印象である。
ただ、彼らの改善や実行のスピードは、日本を上回っていると認めざるを得ない。今回も、日本のプレゼンを終始録画していた中韓関係者もおり、次回は日本の良い点を踏襲して修正してくるのは間違いないと思われる。日本は、今回も優位性を証明できたが、安心してのんびりと構えているわけにはいかないだろう。

【欧米フォーマット】
一方の欧米であるが、いずれも番組フォーマット花盛りである。大手から中小まで、さまざまなフォーマットを販売しており、大型契約の締結も多数発表されていた。
当社からも編成と制作から各1名が出張参加し、日本でも通用する斬新な番組フォーマットを精力的に探した。
彼らの受けた印象を聞くと、日本で通用しそうなフォーマットは最後まで見つけられず、フォーマットの質からいうとむしろ期待外れで、日本のニーズと世界のニーズのギャップを逆に認識させられたとのこと。

言われてみれば、今各国で大ヒットしているフォーマットの多くは、日本人からすれば、既に何十年も前からあるオーディション番組だったり、タレント発掘番組だったり、懸賞クイズ番組だったり、何ら目新しいことはない。
また、欧米系のフォーマットのほとんどが、1人の勝者を生むために、その他全員を排除する「勝利至上主義」で、加えて「拝金主義」なまでの多額の賞金も伴う。悪く言うと、日本人には馴染み辛いワンパターンである。
その意味では、日本の市場ニーズは、番組フォーマットに多様性を持たせ、ガラパゴス的に独自の進化をさせているのかもしれない。クリエイティブ面においても日本は世界に遅れを取っているわけではないし、むしろ独自に進化したフォーマットは世界を先取りしているとも言え、今後、世界に更に売れるポテンシャルは高いと多いに自信を持つべきだ。

日本文化や日本的価値観の輸出にも繋がり、クールジャパン戦略の一翼を担えるだけの実績もポテンシャルも持ち合わせていると思う。
一方で、最近は欧米だけでなく、アジアの新興各国も情報発信を含むマーケティング(含:パブリシティ戦略とプロモーション)に非常に長けている点は否めない。広告や宣伝も洗練されている印象を受ける。
前述したが、これらの点で日本は明らかに後塵を拝している。日本が持つ魅力を、さまざまな方面で伝えきれていないと、頻繁に感じさせられる。どんなに素晴らしいモノ(我々の場合は作品やフォーマット)を持っていても、それらの魅力を上手く伝え、市場ニーズも踏まえマーケティングできなければ、世界市場においては、それらは存在しないのとさして変わらない、と言っても過言ではない。
これらを改善するだけでも、日本のフォーマットは必ず、今まで以上に世界に認知され、より一層流通すると感じている。

(次のページへ続く)  

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