テレビ局がまとまれば、広告費+販促費を狙える!?
【テレビ各局がまとまれば夢が広がる】
各テレビ局はこれまで、様々なネットサービスを提供してきた。しかしどれも満足できるユーザー数は確保できていない。これは、たとえテレビといえども、各テレビ局単独では多くのユーザーを集めるだけの真に魅力的なサービスは構築できないことを示しているのではないだろうか。
最近注目されているソーシャルテレビも、そこまでの力はないだろう。NHKの調査によると、SNSでテレビに関する情報や感想を週に1日以上読んだり書いたりする人は15%だけだ。ましてや、番組と連動させたサービスを利用する人は、さらに少ないだろう。
一方、録画視聴を週に1日以上する人は40%もいる。つまりタイムシフト視聴は、多くの視聴者のニーズに合致しているのだ。現在、テレビ局が提供しているタイムシフト視聴サービスは、VOD(ビデオオンデマンド)だ。これをテレビ局が合同でプラットフォームで提供しているのが「もっとTV」だ。しかし、視聴できるテレビは一部に限られている。
それに対し、ネット企業の配信サービスは充実してきており、ついにAmazonがテレビ番組の配信にも乗り出した。テレビ局は番組の売上は手に入れられるが、肝心のユーザーIDやログデータはAmazonのものだ。「テレビの壁」の外側でVOD市場はすでに成長を始めてしまっており、ここでのテレビ局の売上はもう無視できない規模になっている。今更、テレビ局がまとまってもこの分野で多くのユーザーを集められるとは思えない。
今まだ可能性があり有望なのは、まだ存在していない「全局全番組の見逃し視聴サービス」だ。これを実現すれば、多くのユーザーが利用し、ビッグデータを獲得できる可能性がある。ビッグデータを獲得してこそ、巨大市場である販売促進費を取り込むことができる。
テレビ各局がまとまることは、60年間も互いに強烈なライバル意識をもち闘ってきただけに非常に困難だ。協力し合うことは、自局のパワーを相手に与えることにもなるので、自分だけでやった方がいいという考え方の呪縛は強力だ。しかし今、テレビ局は単独でもそこまでの影響力が本当にあるのか。ユーザーとなってしまった視聴者を独力で動かすパワーがあるのか。
呪縛を打ち破り、全局が足並みをそろえることが実現すれば、テレビの持つ圧倒的なリーチ力を、CM以外でお金に換えられるチャンスが訪れる。そこにこそ、テレビの明るい未来の可能性がみえてくる。
【テレビの進化】
テレビ局の進化の方向はメディア・サービス企業だ。
テレビ局は様々な事業を展開している。上の図はTBSを参考にしたものだがこれでもまだ全てではない。
まず、これら事業全てをサービスと考える。そして地上波テレビをハブにして、インターネットによって結合させる。この中で、最もユーザーが集まるのは、まだ実現していない全番組見逃し視聴サービスになるだろう。入り口はどのサービスでもいいが、どれかをユーザーが利用したら、次々と別のサービスに誘導し、楽しんでもらい、面白いと思ってもらう。ついでにお金も落としてくれたらラッキーだ。
このように様々なサービス群を精緻に組上げることを、サービスデザインという。サービスデザインにより、レベルの高いサービスを提供できれば、ユーザーの感情に強く働きかけ、楽しい経験と高い満足感を与える。これを体験したユーザーは、サービスへの信頼感や忠実度を高めて、周囲の人にサービスを紹介したりするインフルエンサーやアンバサダーと言われている存在になる。テレビ局は地上波テレビを核にして多彩なサービスを複合的に提供する、メディア・サービス企業に進化すべきだ。
メディア・サービス企業に大切なポイントが3つある。
まず、ユーザーファースト。あらゆるサービスを通じて、ユーザーに面白いと思ってもらうことが一番だ。ただし、テレビの番組作りにはあてはまらない。番組は、視聴者に媚びて作ると当たる番組は生まれない。スティーブ・ジョブスが言ったようにユーザーは自分が欲しいものを知らない。同様に、視聴者は自分が何を見たいのか知らない。番組制作者が、自分の感覚を信じて、徹底的にこだわって作れば、中には当たる番組も生まれる。失敗なしに成功はない。
ユーザーファーストは、番組ではなく、メディア・サービス企業がサービスデザインをする際の旗印だ。
次のポイントはUX(ユーザー体験)だ。テレビ局の様々なサービスを利用したユーザーが、トータルから面白いと感じる満足感、体験を、サービスデザインを構築する際の最も重要な指標とする。
3つ目のポイントは、スピードだ。インターネットのサービスは目まぐるしい速さで変化している。ついこの間まで、最先端を走っていたゲームサイトが、突然、人気を失いフロントラインから、ずるずる落ちていくのは、インターネットでの日常の光景だ。テレビは、蓄積した膨大な番組というコンテンツがあるので、そう簡単には、流されないだろうが、今までのように、石橋を叩き過ぎて渡る前に壊してしまうような決断の仕方では、どうにもならない。
インターネットのサービスなのだから、放送のように完成度の高さは求められない。お試し版であるβ版のサービスを次々打ち出し、日々改良を加え、いくつもの失敗の上に、成功例を重ねていく。
こう考えていくと、テレビ局が目指す姿はインターネット企業と全く変わらない。競争相手はインターネット企業だと心得て、これまでよりはるかに厳しい環境の中で生き延びていく覚悟が必要だ。しかしこれこそが、唯一のテレビのサバイバルの途だ。
氏家夏彦プロフィール
株式会社TBSメディア総合研究所代表であやとりブログの編集長です。
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その未来をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
コメント
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