見るだけじゃない!テレビを体験するブランディング
最近では日テレの動きが活発だ。wizTVやJoinTVは、単にテレビとソーシャルメディアの連動というより、視聴者=ユーザーの体験をプラットフォームとする日テレの新たなブランド戦略ととらえた方が正確だ。先にも述べた「番組を見せる」だけではなく、ソーシャルと連動することでテレビ視聴に新たな付加価値を見出そうとしている。そして他局より大きく先手を打つことで、視聴者だけでなくIT系企業やネット系企業から注目を集め、新たなコラボレーション提案が自然に集まり、新企画を次々打ち出し、視聴者からも先進性を持ったテレビ局だとみられるようになる。これも非常に優れたブランド戦略だ。
この他にも本書は、プラットフォームは外部に対してオープンである部分が必要だとして次のように述べている。
『ソフトウェアやITの世界では、アーキテクチャの公開されたプラットフォームこそが、新しい製品を爆発的に世の中に普及させるための一般的な仕掛けであると理解されるようになった。』
『第三者がパートナーとして参画できるプラットフォームの仕組みがあれば、プラットフォームに参加したパートナーが製品・サービスに様々な付加価値を勝手に加えてくれる。』
『ブランドを自社だけで抱え込むのではなく、プラットフォームのかたちにして部分的に外部に解放するのは、生活者が製品やサービスを直接利用しているときだけではなく、その前後(購入から仕様後まで)の体験フロー全体の価値を高めていく必要があるからだ。』
すなわち、視聴者=ユーザーが番組を見ているときだけでなく、ソーシャル連動やメタデータ連動などのサービスを通じての体験フロー全体の価値を高める必要がある。そのために、さまざまなサービスが自然増殖する仕組みとして、プラットフォームを部分的にオープンにするという考え方は、これまでのテレビにはない全く新しい概念であり、まさに視聴者の「見る」だけではない「体験する」価値向上に通じるブランド戦略だ。
このあたりは、志村一隆さんの先日のポスト「APIMEN – アピな人」や、私のポスト「発想の大転換で大ピンチをチャンスに変える〜大胆提言編」の中のAPI公開と通じる部分だ。
最後に、本書のあとがきに書かれた一文を引用する。
『モノだけでなく連携サービスを含めた顧客体験全体の競争が多くの業界に拡がり、日本企業の競争戦略に大きなインパクトを与えるのはこれからが本番となる。多くの業界で不可逆的なメガトレンドとなるだろう。』
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氏家夏彦プロフィール
株式会社TBSメディア総合研究所代表
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その行く末をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
最近はテレビの外の人たちとの人脈が増えています。
コメント
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