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20111/31

「娯楽と実験性の両立と、絶えざる更新~テレビのひとつの使命を考える」 ― 木原毅

テレビの「リアル」とは何か。刺激的な設問ですね。
そのまえに、まず、JAZZ的なものとは何か、僕なりの解釈です。萩元晴彦さん、村木良彦さん、今野勉さんらが「テレビはJAZZである」と提示した頃、JAZZは革新的になろうとしていました。
ジョン・コルトレーンやマイルス・ディビスが、わざと破調させてみる、それをドラムやベースがどう拾って合奏を作ってゆくか。いまなら当たり前のことになっている即興性の高いジャムセッションが数々生まれました。

恐らくはエンターテインメントと実験的なものを共存させてみる、それが今野さんたちの目指したJAZZ的なものであり、「リアル」につながるものではないでしょうか。「リアル」とは、絶えざる更新性。

もうひとつあげてみましょう。同じ時代、例えばビートルズが「ノルウェイの森」で試したこと。ジョン・レノンのメタファー(Norwegian Woodとは何なのか、今でも解釈の分かれるところですよね)、さらにジョージ・ハリスンはシタールを使ってハーモニーに揺さぶりをかけます。ビートルズがいまもなお今日的であるのは、前述したJAZZ的なスピリットを持って、ロックンロールとして成立させたことにあるのではないか。
そしてテレビにはその可能性がまだまだあると考えます。
 
その可能性の模索をネグレクトしたり、新しい手法や近くにある新しいメディアへの関心も怠ってはならないでしょう。

ところで、佐藤さんが、ひとつの終着点としてあげた「世界ふしぎ発見」についてこんなコメントがあります。ちょっと紹介してみましょう。「GALAC」1月号の特集「ひみつの愛好番組」、元TBSのアナウンサーで、非凡な才能を持った喋り手のひとりである小島慶子さんの「世界ふしぎ発見」論です。

 「かって4回だけミステリーハンターをやったことがあるのですが、こんなに難しい仕事はありませんでした。私の旅ではなく、見る人の旅になるように。ミステリーハンターは、見る人が異国の風景に自分の五感を重ねるための触媒です。旅仲間であり、異国のよき友人でなくてはなりません。それを長くできる人は希有~新旧交えて、幾人もの優れたミステリーハンターを長く育てている地道さが、この番組の胆力を証明しています。何か目をひくものに全てを代弁させない。長寿番組ならではの抑制と矜持を感じますね」

(小島さんに続いて特集で「ひみつの愛好番組」を語っているのは、ニワンゴの杉本誠司代表取締役社長、彼の愛好番組はNHK教育の「てれび絵本」でした)

たまたま、僕は去年の11月28日にNHK-BSハイビジョンで今野さんの「鴎外の恋人」も観る機会があったのですが、面白かった。そして「ふしぎ発見」につながるテレビマンユニオンのDNAが、絶えず生きていることを感じました。

木原毅(きはらたけし)プロフィール
1978年早稲田大学文学部卒業後TBS入社。ふりだしはテレビ営業局CM部。その後約20年ラジオのさまざまな現場生活を経て、2000年頃からインターネット・モバイルの部局へ。07年よりTBSディグネット代表取締役社長。

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