あやぶろ

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201012/15

ウィキリークスに見る、新しい国家形態

前川大先輩は、いつも鋭い問いかけを投げてくださる。
自分がいつも、自分の日常から考えて、
自分のブログのエントリーを成すのとは、対照的に、
その問いかけは、先輩が言う
「メディアを作るように、メディアを語れ」という態度そのままに、
きわめて「批評的」だと、頭が下がる。

さて、強引に問いかけを投げてくださった、
「ウィキリークス問題」に関して、つたないながら、
WEBの現業にどっぷり浸かっている立場から、
実感ベースの仮説と妄想?で、お答えしてみたい。

>インターネットは今漸く「インターネットの自由」、つまり
>自分の可能性の< 意味>について考えざるを得ない状況に踏み込んだ。

先輩のおっしゃる、これが、問題の核心だと思う。
自分の好きな概念に、
「ヒトは、国籍・民族から→文化籍・興味族へ、移行しつつある」
というものがあります。
これは、文化人類学者・兼・秋葉原コスプレツアーガイドの、
パトリック・W・ガルバレスさん(東京大学大学院在籍)の持論で、
彼にインタビューに行った時に、聞いて深く感銘を受けたものです。
インターネットが、地理的・血族的つながりから、ヒトを解き放ち、
ヒトは、興味さえあれば、地球上のどこの情報にもアクセスできるようになった。
アラスカの高校生が、日本の80年代のアニメに夢中になるのも、可。
フランスのムッシューが、日本の女学生のセーラー服に夢中になるのも、可。
そして、興味がMAXに達したら、本当に地理的に移動してくるのも、可。
(現に、パトリック氏は文化人類学者として、秋葉原に移住しました。)
その「国籍・民族から→文化籍・興味族へ」ヒトが移行する時に、
「国家って、なに?」という問いに対して、
現行の国家がキチンと答えられていないのが、
現状なう、なのではないでしょうか。

GoogleやTwitterのような、国籍を不問にするサービスと、
「国家間の秘密外交」を「別にファイルゲットしちゃったんだから、
さらしても、いーじゃんよ」と、平気で公開するウィキリークスは、
同じニオイの「常識」を、共有しているように感じます。
その常識は、きわめて「フラット」で、
国家という壁に守られたつながりよりも、
個々人がつながるソーシャルグラフを重視する「常識」だと感じます。

その意味で、変なコントラストですが、
「国家の秘密」を暴露した、ジュリアン・アサンジ氏が、
「個人的な女性関係」を暴露されて、逮捕されるような格好になったことは、
妙に、シンボリックだと感じました。
「暴力」と「常識」が、お互いに、完璧にすれ違っている。。

>「知る権利」とは<19世紀/20世紀>的民主主義に対応した概念だと思われるが、
>いま時代は21世紀的=ネット/デジタル的政治状況に入っていると考えてよい。
>そうだとすると、「知る権利」という概念に変化はあるのかないのか。

「知る権利」は、今や、明らかにメジャー・アップデートを求められていると思います。
最近知った、笑えない笑い話に、
「義務教育の義務って何だと思いますか?」と調査したら、
「中学くらいまでは勉強しなさい、という子供の義務」という回答が、過半を占めた?
というものがあります。(正しくは、保護者が子供に教育を受けさせる義務)
そのくらい、時代とともに、情報とヒトの関係、ヒトとヒトの帰属する先の関係は、
変わっていくものだと、思います。

たとえば、今、自分の帰属する先は、国家や会社であるのと同等かそれ以上に、
「サーバー」である、と感じています。
「知る権利」は現状の、ユーザー・ニーズにマッチしないのに、
その良いバージョンアップ版の概念は、どこからも提供されません。
なぜか?

今のインターネット環境に適した、国体や政治があるはずなのに、
いまだに、アナログの時代のそれが、まったく現状にマッチしない形で、
維持されているのは、なぜか?
メディアや自治体が「知る権利」や「表現の自由」などを題目に、反目しあうのが、
なぜか「絵姿女房」や「わらしべ長者」など、昔話を読み聞かせられているように感じてしまいます。
かつては、国家や自治体などが、最大で最適なセイフティーネットだったのに、
国外では、ギリシャやアイスランドなど、国家が資本に負け始めている現状があり、
国内では、年収200万以下の労働人口が全労働人口の3分の1を超える一方、
生活保護がほぼ同額という現状があり、
どうも、このままでは、いろいろ、うまくいかんのじゃないか、、と、
普通に考えても気づく現実があります。

>新しいメディアの思想が必要なのに、
>状況はそれを放置したまま進行しているようだ。

自分のドタ勘としては、22世紀くらいになって、ようやく、
すべての人々に、新しいメディアや新しい世界にマッチした
思想が行き渡るのではないでしょうか。
そして、おそらく、その頃のメディアは、
さらにさらに、想像を絶して、進化していると、思うんですよね。。。

 

須田和博(スダカズヒロ)プロフィール
1990年 博報堂入社。「使ってもらえる広告」著者。クリエィティブ・ディレクター。現在、エンゲージメント・ビジネス・ユニット在籍。多摩美術大学GD科卒業後、デザイナーとして博報堂に入り、以後、アートディレクター、CMプランナー、WEBディレクターと、7年周期で制作領域を遍歴。全媒体を作り手として把握できる、広告業界でも希な制作ディレクター。2009年「ミクシィ年賀状」で、東京インタラクティブ・アドアワード・グランプリと、カンヌ国際広告祭メディア・ライオンを受賞。新潟県・新潟市出身。

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