あやぶろ

多彩な書き手が、テレビ論、メディア論をつなぎます。

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20132/20

テレビがつまらなくなった理由

番組が当たる確率は2割から2割5

かつて私が制作現場にいた頃は、新番組を4つ5つスタートさせて1つが当たれば大成功だと言われていた。その成功した番組は、「少しでも高い視聴率を獲る」ことや「番組をハズさない」ことを『目的』に作られたものではない。誰も作ったことのない全く新しい番組を作ってやろう!オレ(制作者)が面白いと思うもの良いと思うものをとことん追求して作ろう!としてできたものだ。高い視聴率は、面白い番組の結果だ。番組がハズレないで当たったのは、あくまで結果だ。幾つもの冒険の中から、わずかな成功が生まれる。テレビとはそういうものだ。だからテレビ制作の現場は常に冒険を追い求めていた。

冒険をすれば、当然そこにはミスが生まれる下地が存在する。しかし今はミスは許されないし過剰な演出をするとすぐに批判が殺到する。BPOという怖い存在もある(BPOの方々は、自分たちはそんな存在ではないとおっしゃるだろうが、現場からすれば、結局はそうなのだ)。

上からは「番組をハズすな」、「とにかく問題を起こすな」と言われ、その一方で「視聴率は獲れ」と言われる。

これは元々無理な要求なのだ。

当たるテレビ番組を生み出すには冒険をしなければならない。冒険をすれば、失敗(ハズレ)は必ず生ずるし、ミスが起きる確率も高まる。

テレビという事業モデルは低い番組成功率が前提となっているのだ。

 

 

負のスパイラル

「視聴率をとれ」、「番組をハズすな」、「問題は起こすな」、「金をかけるな」という無理難題とも言える要求に応えるため、現場の制作者は少ない予算で確実に視聴率が見込め、問題が生じないような番組を作ろうとする。そうなると今まで誰もやった事のない冒険などできはしない。だからどの局もどの番組も視聴率が計算できる同じようなタレントを使い、同じようなひな壇に並べ(美術セット代が安いし、見やすいし、コントロールしやすい)、スタジオトークを展開し(リスクは少ないし、安い)、画面にはトーク内容をなぞる字幕スーパーをかける(自分の番組だけスーパーをかけずに視聴率が下がるのが怖いので…)。結局、元の番組企画が違っていても、見た目の印象はあまり変わらない番組ばかりになる。

新たな冒険や実験をやる余裕がなくなっているので、昔大当たりした番組をリメイクして、昔程ではないがそこそこの視聴率を狙うという方法もとられる。しかしそれがなかなか当たらない。時代が変わり、視聴者=ユーザーの生活習慣が変わり、何よりメディア自体やコミュニケーションのあり方自体が大きく変化してしまっているのだから、むしろ「空気読めよ!」となってしまう。

「視聴率を獲れ!」「番組をハズすな!」「カネをかけるな!」と指示することで、視聴率が獲れなくなり、番組が当たらなくなり、収入が減り、制作費がさらに少なくなり、視聴率がさらに下がり・・・という負のスパイラルに落込む。

先日、株式会社mmbiの常務取締役である小牧次郎さんとお話をする機会を得た。mmbiは、携帯電話向けにNOTTVという放送をしている会社だ。小牧さんは私とほぼ同世代。フジテレビでお仕事をなされていた。

小牧さんとは、なぜどの番組も同じようになってしまうのかについて大いに盛り上がった。小牧さんもこの原因は、視聴率の過度の重視にあると睨んでいるが、私などよりはるかに精緻な推論をたてている。

 

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