あやぶろ

多彩な書き手が、テレビ論、メディア論をつなぎます。

© あやぶろ All rights reserved.

20137/30

テレビCM復権のカギ、広告と販促の関係を理解する

テレビCMを投下してもモノが売れない・・・。
検索連動広告は費用対効果が最も効率的・・・。
店頭の対策が一番大切・・・。
店頭へ効率的に誘導するO2Oをやらなくては・・・。

たしかに最近の傾向では広告予算を削減して販促に予算が流れています。いくら広告を投下しても、店頭に商品がキチンと並んでいなければ売れないのは当然です。店頭の対策にお金を掛けること自体は間違いではありません。
しかし、広告と販促は根本的に役割が違います。当然のことながら、どちらかが不要でどちらかだけをやればモノが売れるということはありません。
消費者の顕在化したニーズを競合商品ではなく自社商品に引き寄せるのが販促(プロモーション)ですから、やればすぐに効果が出るのは当然です。それに対して広告(ブランディング)は、ニーズ自体を掘り起こす役割も担っているわけですから、効果が出るには時間が掛かります。
企業の広告費にもROIが求められるようになり、投下した金額とそれによって商品がいくら売れたのか、広告にも説明責任が発生しています。テレビCMも人ごとではなく、効果の検証が必要になっているのは間違いありません。それどころか、説明責任を果たせないからテレビCMを減らすという事が現実に起きていると思います。
しかし、そういう流れは企業にとって危険な側面をはらんでいます。短期的にしか物事を見ない風潮は反応がすぐに現れることしかやらなくなります。それが最近言われている販促費シフトの原因です。食品や飲料などテレビCMですぐに反応が現れる商品ジャンルもありますが、多くの場合はテレビCMのような広告をやっても実際の販売にはすぐには現れないものです。店頭まわりを整備するなどの販促は、直接的に販売に影響を与えるのは間違いないですが、だからといってCMをやめてしまうと長期的には失敗をすることになります。テレビCMが効かないというのならば、店頭との連携がうまくできていないか、短期的な結果しか求めていないかのどちらかの可能性があります。実は商品自体が良くないという可能性の方がずっと高いかもしれませんが・・・。

テレビは元々積極視聴というよりも受動的な視聴態度です。CMも「低注意」状態での視聴となります。たとえ人間は明確な認知効果が認められなくても、もっと言えば無意識であろうとも、CMの視聴効果が認められるという調査報告があります。長期的にCMの接触から離れていると、確実にそのブランドは忘れられてしまうという訳です。
そこをキチンと説明できるデータを提示できることが必要です。もちろん過去にもそのことを主張してきた人はいるでしょう。しかし、明らかにすることで都合の悪いデータが出てくることを恐れて、敢えて明らかにしなかったというのが実態ではないでしょうか。

メディアのデジタル化によって、ブランディングのための広告と、店頭(直販サイトを含む)へ導くための販促広告が、見た目で区別が付きにくくなっています。
ネット広告はそもそも広告なのでしょうか。テレビはスイッチを入れておくだけで次々と番組とCMが流れてきます。典型的なプッシュ型メディアです。視聴態度も完全に受身です。さしたる目的が無くても時計代わりにスイッチを入れっぱなしにする習慣性のメディアなのです。
それに対してネットは完全に能動的な態度で接触します。いくら動画コンテンツを見るといっても、検索して見つかったものをクリックしないと何も始まりません。バナー広告もあたかも偶然出会う広告に見えますが、そもそもそのページには自分の意思が働かない限り到達できません。ましてや、最近ではターゲティング技術の進化によって、偶然ではなくて必然的にそのバナーを見せられていることがほとんどです。SEM(検索連動型広告)にいたっては、興味を持った商品に関することを検索した結果画面に関連する広告を表示するわけですから、広告じゃなくて販促そのものと言っても過言ではありません。しかも検索をする時点で顕在顧客ですから分母は小さいのですよ。購買に至る「率」だけは高いかもしれませんが。
つまりテレビCMとネット広告などの販促メディアは「対」で考えるべきなのです。当然といえば当然の結論です。
テレビCMを販促的に使うという方法もあるでしょう。周到に設計された店頭プロモーションの効果を最大化するためにテレビをその入り口として捉えるのは考え方としては有効です。しかし、これはかなりテレビの限定的な使い方に過ぎません。
テレビCMはそれ以外にもこういう使い方があります。例えば、ニーズが顕在化しない段階での消費者にニーズを掘り起こす効果としてのテレビCM。気付いていないものを欲しいと思わせるところから始める訳ですね。あるいは比較検討中にも背中を押す効果としてのブランディングCM。購入後も自分の選択は正しかったと満足させる商品CM・・・などなど。残念ながら能動的メディアであるインターネット広告だけではこれらの効果を代用することはできないのです。

いずれにせよ、広告・マーケティングに成功の法則はありません。商品、ターゲット、時期によってもプランニングは変わるし、クライアントの求める成果によっても当然変わります。
テレビCMを効果的に使うためにも広告と販促の関係について今一度考えてみる必要があると思います。広告から販促へスムーズに引き継いでいく事が重要ですね。
テレビメディア側としてそれに応えるためには視聴率に加えて多様な切り口のデータを取りそろえていくことが大切です。それを解決するためのソリューションとして私はセカンドスクリーンに注目しているわけです。

 

 

今谷秀和 プロフィール
建築士、インテリアデザイナーとして活躍した後、1990年電通入社。
プロモーション、イベント、空間開発の後、デジタルビジネス系で13年間。
現在電通関西支社 テレビ局 局次長

  • テレビCM復権のカギ、広告と販促の関係を理解する はコメントを受け付けていません。
  • 今谷秀和
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメントは利用できません。

20145/23

勝負に勝つ人、負ける人

4月7日、渡辺喜美氏がみんなの党代表を辞意することを表明した。同党所属議員の事務所宛てにfaxを送った直後に会見を行った渡辺氏は、まるでその…

20132/20

テレビがつまらなくなった理由

まず、お断り アイキャッチ画像と、タイトル及び本文とは関係ありません。 それから、今回のタイトルは、一般視聴者やユーザーにとっては別…

20177/14

あやぶろ復活第1弾!NHKの同時配信についてホウドウキョクで話しました

実は、先月末で38年間働いたTBSを完全に離れ独立、フリーランスとなりました。この3年間は、TBSの関連会社2社の社長業が忙しすぎて、この「…

20144/27

テレビの未来がますます鮮明に・・・最近の統計データから

このところ立て続けに発表された統計データが、かなりメディア周りのドラスティックな変化をつたえています。いくつかの解説記事も出ているようですが…

20133/6

「英国のテレビは面白い!」プラスの生態圏とネットメディア化

2月20日の氏家さんの記事「テレビがつまらなくなった理由」を拝読させていただき、大いに触発された一人である。 日本…

ページ上部へ戻る