英国の大手テレビ局のデジタル化とは
―ソーシャルメディアの利用は?
お決まりとなるが、ウェブサイト、フェイスブック、ツイッターは良く使われている。制作者側、報道陣などが自分たち自身もツイッターを良く使っている。
報道部門にいて、ツイッターを活用していない人はほとんどいないのではないか。ツイッターは瞬時に刻々と変わるニュースを追うのに適している。記者同士が情報交換をしたり、自分が出るニュース番組でスクープを出す前に、まずツイッターで少し宣伝したりする。そうすると、番組を見てもらえる。
人気番組を視聴中や、見た後で、ツイッターで感想を述べ合う、共有しあう行為も盛んだ。
ニュース番組で視聴者から意見を募るとき、メールやツイッターで発信してくれるよう、キャスターが呼びかける。内容の一部を画面の下に出す手法も良く使われた。ただ、今はこれも一段落した感じがある。
―テレビは知的な文化
テレビやラジオの視聴は演劇、書籍、映画、音楽などの娯楽、あるいは文化的な楽しみごとの1つのとして認識されている。
新聞に毎週末ついてくる、テレビやラジオ番組の予定表を載せている雑誌には、演劇から映画、書籍、音楽などのレビュー、これから楽しめるイベントなどの情報がたくさん載っている。番組批評のページを読んで、面白いと思った番組は見逃し視聴サービスを使ってみることができるので、批評が生きるし、さらに充実した視聴感が楽しめる。
英国のテレビ局は視聴者の方を向いている感じがする。視聴者が何を見たいか、見るべきかを考えて、競争しながら制作し、放送・配信している。制作者自身が視聴者であり、ネットを楽しむ現代人であり、テレビ受像機で見ようが、ネット機器で見ようが、視聴者がいるところに番組を送っている。
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話の後で、会場からいくつかご質問をいただき、その1つに英国では番組録画があるのか、録画機が販売されているのかという問いがあった。
実際に録画している人はおり、録画機も販売されているが、今はセットトップボックスに録画機能を持たせる動きがトレンドになっている。
また、見逃し視聴サービスを利用しているとき、コマーシャルはどうなっているかの質問を受けた。これは、まったくコマーシャルが入らない(DVDを見るような感じ)場合と、別の広告主のスポンサーが入っている場合がある。いずれも、最初の放送時よりもコマーシャルが一般的に少ないと思う。
ほかの問いで覚えているのが、「日本のテレビ界をどう見るか」があった。
詳しい答えの部分を失念してしまったのだが、「視聴者のいるところに番組を届けていないとすれば、視聴者の方を充分に見ていないのではないか?」、「自分たちの経営の維持を一番に考えているのではないか?」というようなことを言ったような気がするのだがー。
いずれにしろ、2020年には東京五輪がやってくる。2012年のロンドン五輪では、BBCが全競技を「放送」した。デジタルチャンネルを一挙に増やし、全26チャンネルで同時放送したのと、ウェブサイトでも全て見れるようにした。競技の生中継でも、巻き戻しをして再確認できるようにもした。
日本でいろいろな規制があっても、ガラポンテレビさん、ニコニコ動画さんなど、新しいサービスもドンドン出ている。2020年までには今の私たちが想像がつかないようなすごいサービスが出ているのではないか?「大いに期待しています」。
・・・といって、締めくくらせていただいたように思う。
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みなさま、ご拝聴ありがとうございました。
小林恭子(こばやし・ぎんこ)プロフィール
在英ジャーナリスト&メディア・アナリスト。英国や欧州のメディア事情や社会・経済・政治事情を様々な媒体に寄稿。
著書は『英国メディア史』(中央公論新社)
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『日本人が知らないウィキリークス (新書)』(共著、洋泉社)
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など。
ツイッター@ginkokobayashi
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