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201312/12

英国の大手テレビ局のデジタル化とは

―予定表に縛られない視聴

 

番組予定に縛られない視聴ができるようになっているのだが、もっとも著名なのが、一週間以内に放送されたテレビの番組を無料で再視聴ができる、BBCアイプレイヤーというサービス。

 

これはテレビを見ていて、画面の右上に赤い丸が出てくるので、リモコンの赤いボタンを押すと、画面にアイプレイヤーのプラットフォームが現れ、番組を選ぶようになっている。(どんな視聴機器を持っているかでやり方は変わる)。

 

コンピューター、スマホ、タブレットでは、前者はアイプレイヤーのソフトを立ち上げ、後の2つは専用アプリを使う。

 

民放のITV,C4、C5も同様のサービスを無料で提供している。

 

また、デジタルテレビが入っている家庭には、タイムシフトチャンネルがある。ある日の放送予定をそっくりそのまま、1時間ずらして放送するチャンネル(プラスワン)、2時間ずらして放送するチャンネル(プラスツー)など。これも特別に料金を払う必要はない。

 

英国の視聴者は複数の機器で、時間に縛られず、番組を視聴できるようになっているといえる。

 

主要テレビ局はネットメディア化している。例えばウェブサイトで情報を発信し、ネットで番組が視聴でき、ユーチューブにチャンネルを持って、一部の番組やクリップを視聴できるようにしているからだ。

 

2004年ごろ、BBCの経営陣トップ(当時)、将来「テレビはテレビ受像機でのみ見るものではなくなっている」と述べた。これが実現している。

 

―何故無料で、複数の機器で見れるようにしているのか?

 

1つには公共サービス放送という考えがあると思う。視聴者の利便のために存在している。テレビ局同士の競争もある。1局が無料だったら、自分の局でも無料にせざるを得ない。

 

しかし、最大の理由は、視聴者のライフスタイルが変わり、テレビの前に常時はり付いている人はいないことが分かっているからだと思う。テレビよりも、おもしろい(「おもしろい」とは、自分の志向に最適化された、という意味)画面つまりコンピューターを使ったり、スマホやタブレットを使っている。

 

視聴者のいる場所(コンピューター、スマホ、タブレット)に番組コンテンツを出している、ということだ。

 

視聴者のいる場所というのは広告主にとっても重要だ。だから、広告主もネット空間に注目している。視聴者と広告主のいる場所(ネット)に、テレビ局も出店している・・・ということである。2009年、英国の広告市場ではインターネットがテレビの広告費を抜いたという。

 

最近の動きとしては、新しい番組を放送の前にネットで配信してしまう、と。その後でテレビで放送する。また、過去7日に放送された番組と限定せず、これを30日にまで増やす構想もあるという(BBC)。

 

実際に、米ネットフリックスなど、ネット専門の放送局(配信局)も出てきているので、今後、ネットを先にという流れは強まるかもしれない。

 

もう1つ、何故ネット上にテレビ局が本格的に進出しているかの理由として、テレビで番組を制作している人、経営陣、記者などの報道陣自身が、ネットの利用者であるという部分もかなり大きいと思う。

 

離れ島としてのネット空間に、テレビ局の人材や番組コンテンツが、お義理のように、あるいは誰かに言われたから、進出しているのではなくて、ネット空間が自分たち自身の生息空間である、と。経営陣の中には自分がネットを頻繁に楽しんでいない人もいるかもしれない。でも、少なくとも、「現在と未来がネットにある」ことは知っている。重要であることは知っている。

 

番組を作っている人も一視聴者であり、ネットの利用者なのだ。これがベースにあると思う。

 

 

 

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