地獄でなぜ悪いと東京ガガガ
超絶面白い映画。(ストーリーは公式サイトで確認)モテキ以来の衝撃。
この映画を作った園子温監督は、1990年代東京ガガガという街頭パフォーマンス活動をしていたそうだ。
そして、そのウェブサイト伝説東京ガガガに、交差点に歩行者地獄を現出させた、という言葉がある。
いまから20年前、ウォークマンが若者を内向きにし社会は断絶してると感じてる。
東京ガガガは、そんな断絶した社会をまぜっかえそうという活動である。つるつる(詩集東京ガガガより)と通行人が交わることなく通り過ぎる渋谷の交差点をジャックして、風のように駆け抜ける。
詩人としての園監督が発するつるつるって言葉から連想させるのは、効率化された社会、セグメントされそれに見合った情報を消費することに慣れ切った自分たち。
それは天国じゃない。世の中はそんな効率的なもんじゃない。したいことだけできるなんて甘いもんじゃねぇ。もっとグジャグジャしようゼっていうのが東京ガガガのメッセージであろう。
しかし、それ以降の20年間で、インターネットで、自分たちは欲しいものだけ消費することが可能になった。
プレイリスト、マイページ、レコメンド。。効率化を求める企業じゃなく、自分たち自身がつるつる化した天国を望んだかのようだ。
義弟の友人28歳フリーターの男子は、仕事場でストレス感じるより、給料低くてもいいからスルっと生きたい。だからコンビニのバイトで暮らしてる、という。
彼は彼の天国に住んでいる。そんな生き方に人それぞれだからねーと冷めた思いを持ってしまう自分もつるつる化してる。
そして天国はテクノロジーで細分化した。個々の天国が交わらない状態が断絶と呼べるならまだいい。断絶は他者を認識したうえでの感覚だ。
他の天国と交わらない時間が長くなると、他に天国があることを忘れる。そんなときに、他者と交わるその衝撃が炎上だ。
いまや、未知との遭遇は楽しみではなく、リスク100%である。交わりからは利益を生まないのだ。モノを売る企業だって、広く交わるよりロイヤルカスタマーか一生利益をあげる戦略を志向してる。自分たちもネットで調べあげてからモノを買う。
本当は、メディアが交差点になりグジャグジャ交わる役割を演じるべきである。しかし、部数や視聴率重視に偏るとメディアもつるつるしてしまう。
それでも天国から飛び出て新しいこと、交わるのが好きな人種はいるんだろう。
そんな人への監督からの応援メッセージが、映画タイトルの地獄でなぜ悪い。
自分はそんな風にとった。
オマケ
1)地獄でなぜ悪いを見て、ちょっと前に行った写真展TOKYO 1970を思い出した。伝説東京ガガガに残された写真と、TOKYO 1970の写真群は20年の時間差があるが、同じ疾風感を感じる。
2)なんでこの映画が好きだったかのメモ
まず開始スグに、映画仁義なき戦いの津島利章さん作曲のテーマ曲が挿入される。テンションあがる。そして映画に出てくる警察署の名前が深作警察署、パトカーのナンバープレートにも深作の文字。
仁義なき戦いの深作欣二監督、仁義トリビュートを確認した時点で作品にのめりこんだ。
半沢直樹にも仁義なき戦いの影響を勝手に感じてたのだが、この血沸き肉踊る感じがとてもいい。
3)ガガガという言葉にRCサクセションのガ・ガ・ガ・ガ・ガをすぐ連想した。(YouTubeへ)
4)テレビのグチャグチャ感、アナーキー性はネットやケータイに配信される動画が受け継いでいる。beeTVで配信されている江頭2:50さんのエガチャンピン(YouTubeで第一話だけ公開)やピーピーピーするぞという番組はとても地獄的で面白い。
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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