スマートウォッチは低機能であるべし
ウェアラブルデバイスは、ダイレクトなインプット/アウトプットに特化すべし
ダイレクト操作の必要性が強まっているという文脈を踏まえると、いまスマートウォッチが必要とされるようになってきた理由もなんとなく分かってきます。スマートウォッチは、スマートフォンの「対話型操作」の限界を補うべく生み出された、ダイレクト操作のための機能拡張なのだ、と。
「ダイレクト操作のための機能拡張」という意味でいうと、ほかにも当てはまるものがあります。たとえば米国では、スマートフォンとBluetoothヘッドセットを併用する人が多いと聞きますが、それも該当するでしょう。ヘッドセットとSiriの組み合わせは、ダイレクト操作をさらに高度化したものといえます。GoogleGlassもそうでしょう。スマートウォッチを待つまでもなく、ダイレクト操作化の流れは、ずっと存在していました。
そして、スマートウォッチに限らず、今後注目されていくであろうウェアラブルデバイスの主要な流れも、「ダイレクト操作のための機能拡張」という観点にフォーカスされていくだろうと思います。
ちなみに、流れ上「操作」と限定した言い方になってしまいましたが、より正確には「ダイレクトなインプット/アウトプット」というべきかもしれません。
「インプット」は、能動的な「操作」だけでなく、無意識のインプット、たとえば身体センサーによって取得される情報なども含められるかもしれません。(センサー機能を中心とした機能特化型のウェアラブルデバイスは、いうまでもなくすでにいくつも登場していますね)
またインプットだけでなく、それに対するアウトプットも、スマートフォン本体の画面ではなく、ウェアラブルデバイスからダイレクトに返されるべきです。たとえば、何かの合図を振動やLEDの点灯などで知らせてくれる、とか。
いずれにせよ、スマートフォン本体で行なわれていたインプット/アウトプットを、いかにしてダイレクト化するか。そこに本質があると思います。
日本的な感覚だと、
・スマートフォンとの連動を必要とするより、スタンドアローンで使える方がいい
・機能は少ないより多い方がいい(究極はスマートフォンと同等)
という発想になりがちです。そのうちどこかのメーカーが「うちのスマートウォッチは、スマートフォンでできること全部できるぜ!どや!」という感じの製品を出してきそうな気がすごくします。
が、スマートフォンと同等のことができるということは、それだけデバイスの操作がややこしくなるということでもあります。いまのスマートフォンが持っている対話型の操作体系に相当するものを、すべて内包しなければならないということですから。そうなると、たくさんの機能を選ぶためのメニュー画面が必要になり、そこからドリルダウンする操作が必要になり…と、ダイレクト操作からどんどん離れていきます。
「だったらスマートフォンでいいじゃない」という話になってしまいます。
スマートフォンvsウェアラブルデバイス、どちらを取るかという取捨選択の話ではないのです。スマートフォンの不便さを補完するためにウェアラブルデバイスが必要なのです。
複雑なことをやりたいときは複雑な操作はスマートフォン本体に任せ、ウェアラブルデバイスはダイレクトなインプット/アウトプットに特化する。それが、ウェアラブルデバイスの価値の発揮しどころなのではないでしょうか。
さらにいえば、今後は「デバイスありき」ではなくサービスありきで、シンプルな専用ウェアラブルデバイスが提供されるという流れもあってよいと思います。
「ダイレクトなインプット/アウトプット」という視点で考えれば、サービスごとの最適なウェアラブルデバイスの形があってよいわけです。なにも、サムスンが出すような王道スマートウォッチだけが唯一ベストな選択肢というわけでもないはず。
サービス事業者(私もそこに含まれますが)は、スマートフォンのみでは実現できないダイレクトなユーザー体験を、独自のちょっとしたウェアラブルデバイスとセットで提供するということを、もっとやっていってもいいかもしれません。
伊與田孝志 プロフィール
ニフティ株式会社勤務。ソーシャルテレビサービス「実況レビ番組表みるぞう」のプロジェクトリーダー。
テレビ業界の外の立場から、ソーシャルとテレビが作る幸せな未来を探っています。
1996年、富士通株式会社入社。1999年よりニフティ株式会社勤務。
社会人一年目から一貫して、インターネットサービス事業に従事。ユーザーインターフェイス設計を中心に、数多くのインターネットサービスプロジェクトに参画。
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