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20135/2

ネット選挙をきっかけに、テレビがもっと面白くなってほしい

インタラクティブさが、必ずしも有効に働くとは言えない場合もあります。インタラクティブの必要性をきちんと踏まえなければ、いざ番組を始めたけどコメントが集まらないことも大いにありえます。当たり前ですが、インタラクティブありきな番組は不安要素が付きまといます。視聴者のコメントを誘発しようとすればするほど、見ている側は案外白けているものだったりします。見ている人は、コメントが求められているからするのではなく、コメントしたくなるコンテンツが出てきた時にコメントをする立場であり、イニシアチブは視聴者にあります。

 

さらに言えば、必ずしもリアルタイムで視聴していない人が番組を視聴することもありえます。ガラポンTVなどのような全録機の登場により、見たい番組を後からでも気軽に視聴できる環境も整いつつあります。リアルタイムでインタラクティブ性が高すぎる番組では、後から視聴する可能性の高い潜在的な視聴者にしてみれば、まったくもって面白くない番組になってしまいます。

 

つまり、コンテンツはコンテンツそのものとして完結しておくことで番組としてのクオリティを担保しつつも、さらに視聴者からの投稿によってそのコンテンツがマッシュアップされ、新しいコンテンツへと昇華されるものだからこそ、見ている人もそうでない人も、いつどんな状況であっても楽しめるものになるのです。ニコ動では、投稿されたコメントの日時が違う非同期なコメントでありつつも、つっこむポイントや書き込むポイントが時間軸を超えて同期するからこそ、視聴している者同士の一体感が高まる要素が含まれています。後から視聴しても参加する余地のある仕掛けがあるのは、ネットならではだと思います。もちろん、こうした仕掛けが必ずしもテレビで必要と言うわけではありませんが、視聴者の盛り上がりを作る要素の参考として、意識しておくべきポイントだと思います。

 

 

テレビがもっと面白くなってほしい

 

これまで培ってきた経験と歴史がテレビにはあり、それをすぐに変えることは難しいと思います。また、あまりにネットに寄りすぎてしまうと、テレビとしての矜持を失ってしまいアイデンティティが薄れてきます。テレビがテレビとして存在し、そして「これがやっぱりテレビだね!」と思わせつつ新しいテレビのあり方を提示し、面白いと思ってもらえるものを日々模索していくことが大事なのではないでしょうか。誰をターゲットにし、何を伝えるかを考えつつ、どういった仕掛けをもとに視聴者のUX(ユーザー体験)を向上させるか。これまでの一方通行ではない、新しいコミュニケーションデザインによるテレビのあり方を考えていかなければいけません。

 

「テレビがつまらなくなった」と言われることも時折あると思います。しかし、それはテレビがつまらなくなったのではなく、「テレビ」として見るに値するコンテンツが少なくなっただけだと、私は思います。NHKの密着ドキュメントや朝の連続テレビ小説では、既存のテレビ番組でありながらも、高い注目を浴びる作品は未だに存在します。インターネットが好きな人たちも、何もテレビをまったく見ないわけでもテレビが嫌いなわけではありません。テレビよりも面白いものが、テレビ以外に出てきたからそっちに行っているだけなのです。テレビのみならず、ゲームもニュースサイトも、すべては可処分時間の奪い合いに他なりません。意識すべきは、視聴率などのテレビ局同士での競争ではなく、業種を超えて、視聴者であるユーザーに最高の時間とコンテンツを提供することなのです。

 

当たり前な話かもしれませんが、他よりも面白いものを作り、テレビでしかできない仕掛けを踏まえてのテレビビジネスを考えることが大事なのです。「若者がテレビを見なくなった」と批判するのは、若者が投票に行かなくなったと政治家が批判しているのと同じ現象です。見なくなった・行かなくなった要因は、自分たちで作り上げているのだと自覚しなければいけません。政治がインターネット選挙の解禁で投票率向上に懸命になり、どうやって政治の情報を伝えようかと日々模索しているのと同様に、テレビの世界も同様のことを考えていかなければいけません。そのためには、他業種の特性をうまく利用したり、時には業種を超えて連携し互いの良いものを生み出すためのコラボレーションをしていくことが求められています。

 

どんな業種も、時代に応じて情報設計をアップデートしなければいけません。政治の現場がインターネットによって変化が起きているように、テレビの現場も、これからの時代をどうしていくのかを、改めて考える時期にきているのではないでしょうか。

 

 

 

 

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