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201111/18

「津波の破壊力、そして…」 -氏家夏彦

気仙沼を出て「壊滅的」な被害を受けた陸前高田を視察した後、大船渡に入る。
いくつかの建物は残っているが、また使えるとはとても思えない。ちょうど満潮の時間、さっきまで歩いていた道に水がどんどん湧いて出てくる。周囲の破壊があまりにも凄いので、車が水をかきわけて走る光景を見ても異常に思えない。しかし考えてみたら、台風で洪水警報が出たってこんな風に車が走ることはめったにない。それが日常になっている街。街全体を上げ底しなければ、生活の場としては成り立たないだろう。街として復活するのはいつの日になるのか。
jKEU6V8syl.jpg     写真④ 満潮時には道路に水が溢れる大船渡の街(だったところ)

 

 

視察三日目

 

最終日に訪れたのは岩手県宮古市田老地区。今回の視察ポイントの中でも最も距離が離れていて、ここを訪れると他のいくつかを諦めなければならなかったのだが、何としても自分の目で見たかった所だ。あの、万里の長城と言われた高さ10mの二重の巨大防潮堤でさえ防げなかった津波の破壊力を肉眼で確認したかった。
前夜宿泊した北上市から相変わらず美しい遠野の田園風景、そして紅葉の北上山地を通り海岸線に出る。津波の傷跡の残る宮古市街を抜けて峠を越えると、いきなり非現実的な光景が広がった。海のある方向に異常なほど巨大な防潮堤が続き海は全く見えない。その手前にずっと遠くまで拡がるのは家屋の土台ばかり。山際の高くなった所に僅かに残る家以外は、全てがなくなっている。

 

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写真⑤ はるかに続く内側の防潮堤。左が陸側だが街並みは壊滅している。

巨大な防潮堤を抜けて車を降りる。全員無言のまま時間が過ぎる。私は報道にたずさわっていた経験があり様々な悲惨な現場を見てきたが、「言葉を失う」という感覚をこれ程強く感じたのは初めてだ。あり得ない光景が目に焼きつき、頭の芯がしびれたような感覚だ。

田老の津波対策は防潮堤だけではない。海の中には防波堤も作られていた。しかしこれも津波で破壊され、バラバラになったコンクリートの巨大な瓦礫が波間に見える。

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写真⑥ 沖合にまばらに見えるのが田老地区の防波堤の残骸

 

巨大防潮堤は海岸から100mほど陸側にX字型に二重にそそり立っている。外側の堤防だけで十分だと思うのが普通だろう。ところが海に向かって左側の外側の部分は破壊されている。津波は内側の巨大防潮堤をも越えて田老の街並みを破壊し尽くした。

写真⑦ 破壊された外側防潮堤(右側が海)

これを築いた人たちは津波に対する極めて強い恐怖感を持っていたに違いない。田老地区は過去数十回の津波被害を受けている。近年では明治29年と昭和8年の三陸大津波で全てが壊滅するという大被害を受けた。このため昭和9年から巨大防潮堤整備が始まり、昭和53年に「田老万里の長城」が完成した。

 

G7WPMgOhbU.jpg      写真⑧ 津波で破壊された外側の防潮堤。左上の人物と比較すると
いかに巨大かがわかる。

 

 

「無力感」。あの田老の惨状を見て言葉が出なかった時に自分が何を感じていたのか。今、改めて思い返してみると、どうしようもない無力感を感じていたのだろう。あり得ないほど巨大な防潮堤でさえ防げなかった津波の破壊力。人間の努力など役には立たないと宣告されたような自然の破壊力。防潮堤と薙ぎ払われた街並みを見ていると、どこかで諦めることも必要なのかもしれないとさえ思えてしまう。だって同じような津波が来ても大丈夫な街づくりなんてできやしない。今度は高さ15mにすればいいのか、そんなもの作れるのか、出来るとしてもいつになるんだ。それに備えるために復興が遅れるより、とりあえず復旧でいいから、東北の海沿いの街に人が生きる場を少しでも早く取り戻すべきではないのか。沖合の防波堤と二重の巨大防潮堤でさえ無力だった500年に一度の大津波、こんなものがまた来たら逃げるだけさ。そんな諦めを思い知らされたような田老の視察だった。

 

 

 

 

氏家夏彦プロフィール
1979年TBS入社。報道・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年TBSメディア総合研究所代表。月に200km走るのが目標です。週末は海に出てます。はっきり言ってゲーム・アニメは大好きです。

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