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20138/31

テレビの未来④:[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の衝撃・後編

『テレビの未来』シリーズ、前回は、テレビの視聴スタイルに決定的な影響を与える[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の意味と、その究極の形態を実現する全録機の普及が、テレビ局の時間軸編成を崩壊させ、テレビビジネスの根幹を危うくすることを述べた。
しかし、この危機を先延ばしにする手段がある。そのカギを握るのは高機能ではない簡易型の全録機だ。

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テレビビジネスの危機を食い止める簡易型全録機

簡易型全録機である「ガラポンTV」は、ワンセグ放送を録画することで、データ量を減らし、様々な検索機能を低額で装備させた。さらに視聴はインターネット経由のみ、つまり視聴できるデバイスはスマホやタブレット、パソコンだけで、テレビでは見ることができない録画機だ。
これらの特徴により、ガラポンTVはテレビ放送というビジネスモデルに非常に優しい全録機となっている。

ガラポンTVでは、ユーザーへのアンケート調査を行っている。
「購入前にどの位リアルタイム放送でテレビを視ていたか?」という質問に対しては、実に18%のもの人が「全く視聴していなかった」と回答した。つまりガラポンTVには、完全にテレビ離れしていたユーザーを、テレビ視聴に引き戻す力があるのだ。

また、使い始めてから、リアルタイム放送を視聴する時間が増えた人が30%(変化なしは46%、減ったは24%)という結果が出た。減った人も増えた人と同じ程度いるではないか、と思われるかも知れないが、トータルで減らないということが大切なのだ。
高機能全録機ならば、リアルタイム視聴時間は激減してしまう。それに対し簡易型全録機は、録画視聴からリアルタイム視聴にユーザーを誘導する効果がある。
これにはワンセグ画質が関係していると思われる。ワンセグ画質ではパソコン画面サイズでさえ視聴するのはつらい。スマホの画面がちょうどいいくらいなのだ。このためソーシャルメディアで評判になった番組を簡易型全録機で見て面白いと思ったら、次回の放送や再放送などでは、テレビの高画質大画面でリアルタイム視聴する方が選択されるものと思われる。

また注目されるのが、CM飛ばしについての調査だ。
ガラポンTVユーザーの中で「必ずCMを飛ばす」と回答した人はわずか18%で、その他の82%の人は「スマホではスキップしない」、「操作ができない/面倒くさい時には視聴する」、「興味があれば視聴する」など、何かしらの理由でCMを視聴することもわかった。
これが通常の録画視聴ではどうなるかというと、NHK放送文化研究所の調査では、録画視聴をする人は全体の58%に及び、そのうち「CMを飛ばして見る」について、よくあるという人は76%、時々あるが12%、合わせると88%という高い割合になっている。設問が異なるので直接比較はできないが、CM飛ばし18%がいかに少ないかがわかる。
この理由は、現状、ガラポンTV動画再生プレイヤーは秒数指定飛ばしボタンがないためタイムライン上のバーを絶妙にスライドさせなくてはならず、CM飛ばしの操作が非常に面倒なためだと思われる。
CMが飛ばされないことはテレビ広告というビジネスモデルにとってプラスになる。この点も他の録画機にはない特徴だ。

さらに、購入前と後で、時間の使い道がどう変化したかに着目した設問では、51%の人が、「ガラポンTV以外の録画機」で録画視聴する時間が減ったと回答した。CM飛ばしが多い普通の録画視聴時間を減らすガラポンTVは、CM飛ばしも減らす働きがある。

数年後、記憶媒体の価格低下により本格派の全録機が一気に普及してしまえば、また、違法動画サイトが広く使われるようになってしまえば、テレビ局の時間軸編成は崩壊し、ビジネスモデルは根底から崩れてしまう。

しかしその前に、簡易型全録機が普及すれば、リアルタイム視聴を促進させ、CM飛ばしを阻止でき、地上波テレビという時間軸編成のビジネスモデルが延命する時間は、確実に伸びる。 この考えを一歩進めると、テレビ局が主導する“見逃し視聴サービス”という、さらにテレビが元気になる方策が生まれる。

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  • 氏家夏彦
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