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20136/21

84歳「タヌキ」さんがソーシャルメディアに託したこと

■記者も問われる時代に

タヌキさんの記事に対する感想や社会について思うこと、何気ないコメントの中には常に、自分の生きた時代の教訓を後の世代に伝えたいという意思が強く感じられらた。私は時代の生き証人であるタヌキさんに無条件の敬意をもって接していた。それだけに読者サイトのコメント欄が閉じられ、オフ会などのイベントが開かれなくなったことを誰より悲しんだのもタヌキさんだった。私のところには度々「何とかならないものか」という内容のメールが送られてきていた。

今、新聞業界にはソーシャルメディアブームが来ている。誰もがたやすく発信できる時代になり、情報の送り手と受け手の関係も変化している。ビッグデータ解析への期待も高まっている。そこで一番大切なことは何だろう。

このところ改憲議論含めて「言論の自由を否定する者の言論の自由も認めるべきか」という大学1年生のような青臭い議論が真剣になされなければならない状況になっている。こんな時代だからこそ、多様な言論を支えるメディアの役割は重大さを増しているように思う。新たなツールを使うことが目的ではなく、読者と真摯に向き合い何をするか・できるかという視点、つまり信頼とコミュニケーションの内容こそが問われているのではないだろうか。

記者個人の資質も問われている。ソーシャルメディアは各人の考え方や姿勢も露わにする。真摯な人、傲慢な人、上から目線な人……敏感なユーザーはかすかな気配や言葉遣いから記者の立ち位置までをもかぎ分けてしまう。いかに美辞麗句で固めたツイートをしたところで、ふとした隙間から、その人が過去にどんなことをしてきたか検索し暴かれることもあるだろう。

「戦争だけはしちゃいけません」と言い続けて旅立ったタヌキさん。その思いを胸に、私自身しっかりと足元を見据えて、新たな時代へと歩いていきたい。

中島みゆき(なかじま・みゆき)
新聞記者。経済部、学芸部、デジタルメディア局などを経験。9.11後にネット上の声を集めた「非戦」(坂本龍一監修・幻冬舎)編集に参加、デジタル時代のメディアのあり方に関心を持つ。05年11月、全国紙で初めてブログ機能を取り入れた双方向の読者サイトを設立。5年間、管理人として読者との対話にいそしむ。10年、全国初のツイッター連動新聞を発案。初期の「中の人」を務めた。同年4月から慶応義塾大学メディアコミュニケーション研究所非常勤講師。名前は本名ですが「地上の星」への道は遠いような…。家族は熊のような息子が一人。前川センパイは学芸部時代の取材先です。

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