「英国のテレビは面白い!」プラスの生態圏とネットメディア化
―創造性を重視している、あるいはそう謳っている
4月から、BBCには新しい経営トップ(現ロイヤル・オペラハウスの最高経営責任者トニー・ホール)が就任する。
就任前のガーディアン紙によるインタビュー(3月2日付)で、ホールはBBC経営陣の仕事として、「番組制作者、脚本家、演出家が創造性を発揮できるような環境づくりをすること」と真っ先に答えている。
「BBCは公共放送だから、民放とは違って広告主を呼び寄せる必要はない、だから、そんなことが言える」・・・と思われるだろうか?それにしても、制作サイドから見たら、うらやましいような言葉ではないか。
創造性云々は、実は一種のプロパガンダでもある。
英国の放送業界で、収入規模から行くと衛星放送BスカイBとBBCは二大巨頭の存在だ。放送業界の雄として、BBC経営陣には大きなビジョンを語ることが期待されている。二ケタ台の予算削減策を実行中のBBCは、財政的にかなり苦しい状況にあるが、夢を語ることは大切なのだ。
もう一つの例である。
テレビでBBCを見ていると、時々、制作中の番組の宣伝が入る。例えば、複数の番組の短い動画を入れながら、「この春からこんな面白いオリジナルのドラマが放送されます、お楽しみに」というナレーションが入る。
番組の予告という主目的のほかに、外国(特に米国)からの輸入ではなく、原作があってそれをドラマ化したのでもなく、「オリジナルの」、一から作ったドラマであることをアピールしている。「安易に番組を作っていない」、「ほかのどこでもやっていないオリジナルのコンテンツ」、「あなたが払ってくれた受信料を質の高い番組に使っている」というメッセージを伝えたいのだ。
日本ではわざわざ「オリジナルのドラマです」なんていう必要はないだろう。英国でこの点を強調するのは、先の経営陣の夢の話同様、宣伝・プロパガンダともいえよう。
でも、実際に、まったくのゼロから(つまり作家の頭から)ひねり出すアイデアをテレビのドラマにするなんて、ものすごく大変なことではないだろうか?「誰もやっていなかったこと」を形にする、これは究極の創造性発揮の一例だろう。
だとしたら、「これは、すごいぞ!」と宣伝しても、いいわけである。
つまるところ、「テレビ=創造性が高いコンテンツが出る場所だ」ということをアピールしているわけだ。
創造性が重要だということが、テレビ界の、そして社会全体の暗黙の了解になっていることが分かるーどれほど実現できているかは別としても、である。
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