あやぶろ

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20133/6

「英国のテレビは面白い!」プラスの生態圏とネットメディア化

―公共放送の伝統

 

日本のテレビ界は民放が圧倒的な力を持つが、英国は「公共放送」の伝統が強い。

 

BBCの初代の経営陣トップ、リース卿は、BBCの使命を「情報を与え、教育し、楽しませること」と定義したが、放送業は娯楽あるいは金儲けのためではなく(あるいはそのためばかりではなく)公共の利のためにある、という考えが、現在までも尾を引いている。

 

1950年代半ばに開局のITV,1980年代前半のチャンネル4、1997年のチャンネル5にも、放送免許を与える条件として、公共性がある放送を求められた。

 

自主規制に任せられている新聞業とは違い、英国の放送業は「公益」の面から手足を縛られているともいえる。

 

 

―ネットの普及が後押し

 

不景気による広告収入の下落やネットと言う新たな媒体の出現で、英国のテレビ界が挑戦を受けていることは、日本の場合と同じである。

 

しかし、もしかしたら、現時点で大きく違うかもしれないのが、英国のテレビ界がネットを使った放送を非常に積極的に行っていることだ。テレビとネットとの境界線がだんだんあいまいになっている。

 

BBC,ITV,チャンネル4、チャンネル5は、オンデマンド放送、つまり、見逃し視聴サービスを数年前から提供している。

 

重要な点は、このサービスを(ブロードバンドにつながっている必要はあるが)、無料で利用できることだ。

 

この点は、強調しぎることがないほど重要だ。というのも、たとえ小額でもお金を払って見逃した番組を視聴できるようにした場合、そのサービスが「すべての人に(=ユニバーサルに)」提供したことではなくなってしまう。そうなったら「公共サービス」にならない。

 

無料利用を後押ししたのには、BBCの大きな存在もある。BBCがこのサービスを無料で提供していたら、民放が有料化するわけには行かない。無料のBBCのサービスばかりを利用されたら困るわけだから。

 

当初、このオンデマンドサービスはチャンネル4が先導していたが、BBCが本格的に参入したことで、一気に利用が伸びた。

 

ITV,チャンネル4、チャンネル5は、「タイムシフト・チャンネル」も併設している。これは、例えばITVの番組が、主力チャンネルでは定時に視聴でき、「+1」と付いたチャンネルではまったく同じ番組が1時間後に、「+2」では2時間後に視聴できるというものだ。

 

放送から見逃しサービスが利用できるまでの間の時間はどんどん縮小され、今では最初の放送時間から数時間でその日の番組が再視聴できる。何度見ても、放送時から1週間以内であれば、無料だ。

 

これで、英国の視聴者は番組予定表からほぼ完全に自由になったといえよう。録画する必要もないのである。

 

テレビの視聴は受信機から携帯電話、タブレットなども含むように広がっているが、「やっぱり、テレビ番組はテレビで見たい」という人が増えている。具体例は、2012年夏のロンドン五輪であった。携帯機器での視聴が増えたが、同時に、ソファーに座って、大画面で見た人がかなりいた。

 

メディア動向を分析するシンクタンク「エンダース・アナリシス」のトビー・シフレットは、筆者に「ネットがさらに生活に密着する時代になっても、テレビの有効性は変わらない。むしろ強くなる」と語っている。

 

 

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