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20125/28

5・28【「トラフィック囲い込み」至上主義からの脱却②】田渕 聡

 

「トラフィック囲い込み」至上主義からの脱却①より

 

“ayablog.com/old”の誕生

新生“あやとりブログ”の右カラムには、今Twitterでつぶやかれている“あやとりブログ”に関するストリームを表示させることで、オーディエンスと記者ブログを繋ぐことを試みました。これにより、どんなトピックがネットオーディエンスに刺さっているかが可視できるものとなっています。
また、記事に設置されたTwitterボタンをクリックすると記事タイトルが簡単にTwitterストリームに流れますので、広がりの切掛け(シェア)を簡単に作り出せます。
更に、Facebookアカウントを使ったソーシャル・ログイン機能を実装することで、オーディエンスがコメントで実名参加できるようにしました。これは、無記名でのコメント荒らしも防止できる他、ポジティブな意見も、ネガティブな意見も、Facebook上のウォールを介して前向きに語られます。つまり、ネガティブな意見が「前向きに」に語られることによって炎上を防ぐ効果が期待できます。これは、Facebookの“いいね”がポジ・ネガ両方に作用することを逆手にとっています。
また、Facebookへの記事シェアでは、リコメンダーの顔が見える為に共感が得やすく、類似属性を持つユーザー同士が“いいね”ボタンを押す傾向があり、更にそこからTwitterなど他のソーシャルメディアにシェアされることも考えられます。
これらの効果は覿面に現れ“新あやとりブログ”移行後、アクセス数は飛躍的に向上、日によっては従来の100倍を超えるページビューを記録するようになりました。

実は“新あやとりブログ”で実行したことは、極めて単純なことでした。トラフィックを溜め込むのではなく、外に出して更なるトラフィックの呼び水を作り出すという「今風」の方法に過ぎません。

話を元に戻します。
ここ数年Facebookが世界的にブレイクしていることは誰しも認める事実。そもそもFacebookはクローズドなソーシャルメディアで、トラフィックを外に出す必要はありません。しかし、FacebookはAPIを公開しアプリを介して様々な外部連携による機能拡充を進めることで、ユーザービリティの向上を継続しています。かつてのヤフーがトラフィック至上主義をかざし、あらゆるコンテンツをアグリゲートしてきたのとは真逆に、ユーザーが欲しいものをユーザー自身が自由に持ち込み、勝手にシェアさせるという手法を採っています。
飲み屋に例えるなら、「ボトル持ち込み自由。グラスと氷は提供しますよ! だけど、お腹を壊しても責任はとりませんからね。」的な発想でしょう。お客は気をよくして、どんどん友達を連れてきてくれる。・・・・「ここに来るならキチンと名前を名乗ってね」というルールさえ守れる人ならウエルカム。これがFacebookなんだと思います。現在、大企業、マスメディアの殆どがFacebookページを有し、ユーザーが気に入れば、「いいね」を押しておきさえすれば最新の情報が自分のウォールに表示され、鬱陶しく思ったら「いいね」を取り消せばよい。極めて単純な構成です。私の場合、気になるニュースをアグリゲートするFacebookページを作って自分のウォールに表示しています。自分が作ったニュース・アグリゲートページをいつの間にか友達が「いいね」押して使ってくれていたりします。YoutubeやTwitterも同様にAPIを公開、他サービスとの連携に積極的です。何れもコンテンツ調達コストが発生しないCGMサービスであるところがポイントです。トラフィック抱え込みを続けるサイトの多くは、コンテンツ調達にコストを掛けているところということでしょう。お金を掛けて集めたトラフィックは、やはり逃がしたくないということなのでしょう。

実はヤフーもメディアも、コンテンツ調達にコストを掛けていることにお気づきでしょうか。ところがヤフーは近年、トラフィック囲い込みから脱却しつつあります。かつてのヤフー・ニュースでは「外部リンクなど以ての外」でした。それがここ数年の間にソーシャルボタンを追加したり、記事見出しから外部サイトへのリンクアウト、宮坂学CEO体勢移行後は「爆速」をキャッチフレーズにFacebook連携を強化するなど、ヤフーは大きく変わりつつあります。新聞や通信社のサイトではコンテンツバリューの低下にも繋がりかねず、トラフィック・アウトに対して慎重姿勢。一部には比較的に早い時期からソーシャル連携を実現している新聞社もみられ、一概にどちらが正しいとは言えないのも事実。そんな最中、フジテレレビがYoutubeとパートナーシップ契約を締結したことが最近話題になりました。
大事なことは、ユーザー(オーディエンス)も含めた“BtoBtoC”に於け
Win-Win-Winなモデルを構築することなのか、と思います。

 

 

「トラフィック囲い込み」至上主義からの脱却①へ

田渕聡 プロフィール
元ヤフー ニュース・メディア プロデューサー。
2005年、TBSと「世界陸上特設サイト」を配信。ヤフーにとって初のメディアコラボレーションを実現。その後、複数のITベンチャーの立ち上げに参画。現在、TBSディグネットのメディア・プロデューサーとして「あやとりブログ」「みんなのメイクTV」を担当。

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